「芸人たちの覚悟に刮目」Netflix過激企画《罵倒村》がコンプラ全盛の今の時代に攻めたワケ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

人が罵倒され、痛みを感じている様子を見て女性タレントが屈託なく笑うというのは、視聴者から批判を招くリスクもある。しかし、森はその性悪キャラを生かして、視聴者の代わりに楽しむ役割を自然に演じている。純粋に面白いから笑っているという姿勢を貫く森の存在は、不謹慎さのある笑いを幅広い層の視聴者に伝えるうえで重要な役割を果たしている。

YouTube版からNetflix版に変わったことで、予算は拡大し、キャストも豪華になり、演出も大規模になっている。昨今の地上波テレビでは経費削減が進められていて、この手の大がかりで実験的な企画を実現させるのはどんどん難しくなっている。そんな中で、こうした配信サービスならではのコンテンツこそが、現在の笑いの最前線に立っているとも言える。

人が激しく怒っていたり、悪口や陰口を言ったりする動画はYouTubeなどでも話題になることが多い。人が感情的になっている様子は、それ自体が興味深いものだからだ。

新しい形の毒舌エンタメ

しかし、そういうものばかり見ているとどこか殺伐とした気分になってくる。ウェブの世界では生の感情をぶつけ合うような刺激的なものばかりが求められ、人々が心をすり減らしている。

その点、「罵倒村」では、笑いのプロとプロがきつい言葉のやり取りで笑いを生んでいる。何を言われても笑いにするという覚悟のある芸人たちが、核心を突いた悪口を全身で受け止めて、身悶えて、そのさまを笑いに変えようと必死になる。そこには「芸としての悪口」の健全な姿がある。「罵倒村」は今の時代に即した新しい形の毒舌エンタメなのだ。

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事