トランプ関税はトヨタに自動車業界で最大の打撃、2カ月で損失は1800億円に

米国のトランプ大統領が進める関税政策により、自動車業界で最も大きな打撃を受ける企業はトヨタ自動車になる見込みだ。販売規模が大きいことに加えて米国では現地生産だけでなく輸入も多く手掛けており、マイナス影響の規模が膨らむ。
輸入車と自動車部品への関税により、米ゼネラル・モーターズ(GM)は最大50億ドル(約7200億円)の影響を受ける可能性があることを明らかにし、通期の利益見通しを下方修正した。フォード・モーターは関税で15億ドルのマイナス影響を見込んでおり、業績見通しの公表を取りやめた。
一方、トヨタは関税影響で4-5月の2カ月間だけで1800億円の損失が出るとの見通しを明らかにした。今期(2026年3月期)の営業利益計画は3兆8000億円と前期比21%減としている。
世界首位の自動車メーカーであるトヨタは昨年1年間にトヨタ・レクサスブランドで約1016万台を販売。そのうち米国分は約23%を占めた。米国で販売する半分以上を現地生産しており、日本から輸入された完成車は約54万台だったが、広報担当者によると、部品の輸入も含めると年間120万台分に相当するという。
トヨタは米国で約3万人の直接雇用の従業員を抱える。ケンタッキー、インディアナ、テキサス、ミシシッピの各州に自社の完成車工場を持ち、アラバマ州にあるマツダとの合弁工場でも車両生産を手掛けている。 ただ、米国の工場はフル稼働状態にあり、海外からの生産移管に対応する余力は乏しい。中でも、主力のケンタッキー工場はフル稼働に近い状況が続いているという。
高いハードル
関税導入後も、トヨタは米国内の工場での生産量を維持し、ディーラーでの車両価格にも反映させない方針を続けている。日米間で2国間貿易交渉をにらんだ対応とみられるが、合意時期は依然として不透明だ。
トヨタの広報担当者は、トヨタは65年以上にわたり米国の文化の一部として現地の顧客のニーズに応えてきたとした上で、「現在の事業を継続しつつ固定費の削減に引き続き注力し、関税を含む米国当局の動向を注視していく」とした
米国は先週、英国との間で関税交渉で最初の成果となる貿易枠組み合意を公表した。ただ、米国は英国に対しては貿易黒字であり、日本とは状況が異なるとの見方がある。
T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは、日本が自動車関税を引き下げるハードルは高い一方で、日本にとって自動車産業は重要であるため米国の主張を簡単に飲むことも難しく、交渉は簡単には進展しないとの見方を示した。
トヨタの佐藤恒治社長は8日の決算会見で、関税の詳細についてまだ流動的な面もあり、「先を見通すというのはなかなか難しい」とした上で、「軸をぶらさず、じたばたせずしっかりと地に足をつけてやれることをやっていく」と述べた。
著者:高橋ニコラス、ドーソン・チェスター
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