避難所でふさぎ込んでいた80歳の裁縫名人、「死のうと思ったことも何度かある。今は、生きててよかったと思う」--そごう柏店「までい着」販売会までの足取りを追う

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夏までは、漠然とした不安感が募って眠れない日々を過ごしていたが、今は、つい夢中になって裁縫が夜なべ仕事となり、朝寝坊してしまうことすらある。

「寝坊しちゃ、ダメだねえ」

こう言って、ウメさんはみんなを笑わせる。

「部屋に閉じこもっていたときは、カーテンレールを見て、あそこに紐をつけて死のうかと、ときどき思っていた。死ぬことがまったく怖くなかった。食事をしていても味を感じなかった。でも、今は生きててよかったなあと思っている。仕事をしているからだねえ。(佐野)ハツノさんのおかげだあ。頑張らないと」

ウメさんたちは、3月10、11日のそごう柏店の販売会に向けて、懸命に手縫い仕事を続けている。10日には、ウメさんも売り場に行く予定だ。販売コーナーで手縫いの実演をしたいと思っている。

とにかく、今は一生懸命だ。深夜、床に入っても、「売れずに販売会が失敗したらたいへんなことになってしまう」などと思わず考え込んでしまう。

ウメさんは、ここのところまた、寝つきの悪い夜を迎えている。でも、昨年夏までの暗い眠れぬ夜とは、訳が違う。


(浪川 攻 =東洋経済オンライン)

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