調べれば調べるほどトランプ政権はニクソン政権とそっくり、もしベッセント財務長官への信頼が揺らげばアメリカはどうなってしまうのか

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これを一歩進めると、トランプ政権の経済諮問委員会(CEA)委員長を務めるスティーブン・ミラン氏の「マールアラーゴ合意」のような身勝手な議論になってしまう。

すなわち世界各国は、外貨準備のドルを売って自国通貨を高くすべきだ。ただしそれでドルが暴落して長期金利が上昇すると皆が困るから、100年満期のゼロクーポン債と交換させてしまえ。あるいはアメリカが安全保障を提供している国には、アメリカ国債を買わせてコストを回収すればいい。嫌がる国に対しては、関税をかけて資金を徴収しよう、などと言っている。

財務長官への信頼が揺らげば、ドルもアメリカも危ない

ミラン氏自身は「トランプ受け」を狙った確信犯なのであろう。ただしこんなことを言っていたら、それこそ本当に世界の投資家のドル離れを招き、ドルは基軸通貨でなくなってしまうのではないか。そうなるとアメリカの覇権国としての地位まで揺らいでしまう。

それに比べれば、「ニクソン・ショック」はまだ理解できるのである。1971年までの「ブレトン・ウッズ体制」においては、アメリカは自発的にドルと金の公定レートでの交換を約束していた。アメリカが赤字を垂れ流しても、他国は固定相場制を維持するためにドルを買って自国通貨を売らねばならず、ドル資金はアメリカに還流していた。結構なご身分だったのである。

しかしいよいよアメリカの赤字が拡大し、各国が手持ちのドルを金に換え始めたことでこのシステムは持続不可能になる。アメリカはここで為替レートの調整役としての仕事を降りることになる。今から思えば、「ドル・金交換停止」(ニクソン・ショック)はいつか来るはずの瞬間であったのだ。

そして1973年以降は変動相場制が定着する。それから半世紀たった今になってもドルが基軸通貨であり続けているのは、「皆が使うものは便利だから」という堂々巡りのような理由からである。

そんな中でトランプ政権は、ドルを傷つけるような行為を重ねている。さらなる減税によって財政赤字を拡大させ、法の支配に挑戦し、中央銀行に喧嘩を売っている。移民の数を減らしたり、大学教育を妨害したりすることも、長い目で見ればアメリカ経済にとってマイナスであろう。ついでに言えば、仮想通貨(暗号資産)を後押ししていることも、地下経済におけるドル離れを招く要因となるだろう。

4月2日の「相互関税」公表の直後に、「株・アメリカ国債・ドル」のトリプル安が生じたことは記憶に新しい。海外の投資家は、今はまだ「スコット・ベッセント財務長官が何とかしてくれる」と信じてドルを持ち続けている。しかしそこが揺らぐようなら、いよいよドルもアメリカも両方の地位が危うくなってしまうのではないか。

以上、「ニクソンとトランプ」の比較を深掘りしてみて、そこがいちばん気になったところである(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

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