事実は映画よりも奇なり? 多くの日本人が知らない「新ローマ教皇」レオ14世(69)に託された先代からの"遺産"と"宿題"
結果、同性愛などの禁止行為へ理解が深まった反面、教義が曖昧化したほか、謙虚さの強調で貧富の差を縮める効果を生んだ一方、経済発展を阻害した。さらに、政治へのコミットメントが宗教色を弱めたり、組織改編に至っては改革派と保守派の分断を生む結果となった。財政再建という課題も残る。
しかし、コンクラーベ前の会議では、フランシスコが実行した刷新により生まれた分断は乗り越えるべきものとして多くの枢機卿が認識したと伝えられる。推進してきた刷新は、伝統との衝突を承知のうえで、現代と向き合う教会の再構築を目指したものとして評価されている。
フランシスコが残したレガシー(遺産)は、カトリック教会組織が失いかけていたイエス・キリストが残した宣教精神だった。性的虐待を隠蔽し続けた体質は、被害者の泣き寝入りを長期化させ、被害を拡大させてきた。新教皇はバチカンの隠蔽体質を打破すること、組織の透明性を高めることも求められる。
新教皇レオ14世が直面する課題
カトリック信者の内訳は、アメリカ大陸が6億7200万人で、とくに中南米に多い。ヨーロッパ大陸は2億8500万人だが、最も減少幅が大きい。一方、アフリカ大陸は2億8100万人で、世界で最も成長が顕著だ。アジアはフィリピンの9300万人を筆頭に1億5500万人となっている(2023年時点)。
筆者の住むフランスのカトリック教会の衰退は顕著で、2000年に人口の60%がカトリック信者と自認していたのが、2021年には47%に減少。18〜49歳の層では、2010年の43%から2020年には25%に低下した。実際にミサに参加するのは10%を切る状況だ。多くのカトリック系の宗教施設が売却され、オフィスやホテル、個人の住宅に改装されている。
逆に、同期間に無宗教と自認する人の割合は45%から53%に増えている。また、イスラム教徒は8%から11%に増えた。
フランスは大革命から100年後、ライシテ(宗教分離、世俗主義)を国是として決定した。バチカンの権力が国家統治に影響を及ぼした歴史と決別するためだった。しかし、当時と異なり、今では移民が北アフリカから持ち込んだイスラム教がライシテを危険にさらし、さらに宗教は社会の隅に追いやられ、「信仰とは何か」ということが忘却される段階にある。
欧州のカトリックの教勢は、世界で最も減少しており、世俗化の進展、聖職者の性的虐待スキャンダル、移民が持ち込んだ他宗教が増加する中で、カトリックの宗教的アイデンティティーは急速に薄れつつある。
フランシスコの残した宣教の原点に立ち返ろうという精神を受け継ぎ、欧州におけるカトリックを立て直すことができるか。新教皇レオ14世の挑戦が始まろうとしている。
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