犬を食べたら≪3年以下の懲役、または約300万円以下の罰金≫に。韓国の「犬肉文化」が今さら禁止された理由とは?北朝鮮はタンコギとして珍重

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この法制化を巡っては、様々な解釈が乱れ飛んでいる。間違いないのは、韓国内での「動物愛護」を巡る雰囲気の高まりだ。食生活が豊かではなかった中世から戦乱が続いた近現代にかけ、韓国では、まず人間が生き残ることが最優先されてきた。犬を「補身湯」などにして貴重な栄養源としたのが、その象徴だ。犬をペットにする習慣も、1980年代ごろまでは富裕層などに限られていた。ところが、高齢化社会や核家族化で孤独な人が増えたこともあり、韓国語で言うところのペットの「位相(地位)」が確実に上がっている。最近では漢江の川べりをペットを連れて歩く高齢者の姿が目に見えて増えている。

「愛玩動物」から「伴侶動物」へ

韓国では長らく、ペットを「愛玩動物(エワントンムル)」と呼んできたが、最近では「伴侶動物(パルリョトンムル)」に変化した。ペットを家族の一員と位置付ける動きは数年前からあり、2020年から2022年にかけての新型コロナウイルスの感染拡大で一気に加速した。最近でも、ちらほらと、「補身湯」の看板を下ろす食堂が出ているという。相変わらずの食糧難で、犬肉が「甘肉(タンコギ)」として珍重されている北朝鮮とは対照的な動きだ。

韓国では犬に比べて、猫は「目が冷たい」「何を考えているのかわからない」などという評価を受けていたが、最近は猫をペットにする人も激増している。こうしたペットに対する見方の変化が、「食べるなんてとんでもない」という声を後押ししたのは間違いない。韓国メディアは、犬食禁止法を好意的に伝えた欧米メディアの報道を詳しく転電したが、国際社会の視線を気にしがちな、韓国の空気も一役買ったと言えるだろう。

ただ、それでも法律まで持ち出すのは如何か、という声もある。日本の官僚の知人は「私だったら、そんな法案は立案しませんけどね」と語る。韓国の元政府関係者も「法律は、食べたら違法とはしていない。人間の食文化を縛ることへの遠慮があったのかもしれないが、それにしても、度を超しているという印象も残る」と話す。

こうした「違和感」のためか、韓国の政界雀たちの間で、色々な「評論」「分析」が飛び交っている。中心にいるのは尹錫悦大統領の妻、金建希氏だ。金氏は2022年の大統領選中から、愛犬と一緒にいる姿をSNSで発信するなど、ペット好きの人物だということが広く知れ渡っていた。2023年12月には、尹大統領のオランダ訪問に同行した際、アムステルダムで動物保護団体と面会し、「犬の食用禁止は大統領の公約だ」と言い切ってしまった。韓国大統領室も犬食禁止について尹大統領の国政課題の一つに含めるなど、法制化に積極的に関わってきた。

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