犬を食べたら≪3年以下の懲役、または約300万円以下の罰金≫に。韓国の「犬肉文化」が今さら禁止された理由とは?北朝鮮はタンコギとして珍重
ほぼ60代以上の韓国の知人たちも「ケコギ(犬肉)は伝統的な特別食」と口をそろえる。日本でも「補身湯(ポシンタン)」という名前で知られているように、韓国では夏の暑い時期、日本の「土用の丑」にあたる「三伏(サムボク)」に、補身湯や参鶏湯(サムゲタン)などの滋養食を楽しむ習慣がある。また、犬肉は「美容に良い」「怪我や手術後の傷を早く治す効能がある」などとも言われてきた。
韓国スポーツ界で働いてきた60代の知人は現役当時、夏になると記者クラブに出入りする韓国記者団を招いて犬肉を振る舞った。「食べない記者も一部いたが、たいていの記者は出席した。補身湯は、(牛の肉や内臓を煮込んだ)ソルロンタンより2~3倍高いから、記者たちも喜んで食べていた」と話す。犬肉は独特の臭みがあるとされ、敬遠する人もいるが、この知人によれば、評判の良い店は調理方法もしっかりしていて、臭みは全く感じないという。財界人にも「犬肉ファン」がいて、1年に1~2度、1人あたり7万ウォン(約7000円)くらいの高級犬肉セットを楽しんでいたという。
もちろん、これは長い歴史があってのことで、犬肉文化を知らない外国人からみれば、「野蛮な行為」に映るのだろう。1990年代にソウル大に留学した外交官の知人は、ソウル大生から「理系の奴らは新歓コンパに犬を連れてきて、みんなで食べているらしい」という話を聞いて震え上がった。ソウル近郊の水原市にあった犬肉専用市場に行くと、檻に入れられた中型の食用犬が、視界に入るだけで数十匹以上いた。そこでは猫も売られていて、市場関係者から「これは漢方薬に使うから」と聞かされ、更に仰天したという。
ペットの地位が確実に上がっている
では、なぜ2024年になって犬食禁止法が成立したのだろうか。韓国メディアによれば、法律化の動きは文在寅政権の時代に始まった。2021年9月、文大統領が犬の食用に慎重になるよう周囲に指示。2022年5月に尹錫悦政権が発足すると議論が再開された。2023年6月、議員立法の提案が始まり、計8案が出そろった。2023年12月、法案が一本化され、2024年1月、法制化と相成った。大韓育犬協会など、犬肉に関係する団体は「飼育中の200万匹の食用犬をどうしてくれるんだ」と怒り狂い、犬食禁止法を推進した国会議員の落選運動を行うと息巻いたが、議員たちは超党派で圧力をはね返したという。
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