「SNSで本名は使わない」「顔出し投稿NG」 Z世代の意外な”SNS観”と親が意識すべき重要事項 「SNS禁止法」が日本で制定される可能性は?

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Instagramのティーンアカウントとは
Instagramの「ティーンアカウント」では、利用者に連絡できる人や表示されるコンテンツを制限できる(写真:Instagram公式ホームページより)

興味を持って聞いてみたものの、「投稿している子はほとんどいないよ」と言われた。男子生徒は基本的に投稿なしでアカウントのみ。一部の女子生徒が投稿しているが、顔をスタンプで隠しており、個人が特定できないものばかりだという。

LINEも、友人の間ではアイコンに顔写真を使う子はおらず、名前もニックネームのみ。個人情報を出したり、全体公開にしたり、知らない人とつながったりする使い方は一切されていないそうだ。

ただし、LINEでのメッセージのやり取りは相変わらず活発だ。長時間利用に苦い顔をしたくなるが、どうやら部活、秋に行われる文化祭の実行委員会の話し合いや連絡をしているらしい。具体的には練習日時や場所の変更、持ち物の連絡などが中心だ。そうした必須の連絡に使われており、自宅でも真面目な顔でせっせと委員会の話し合いや連絡を送り合っているのをよく見かける。

先日、委員会の場所と時間が急に変更になった時は、同じ校内にもかかわらずLINE通話で連絡が飛んできたそうだ。

個人情報に関する意識が高まっているのは、息子の高校だけの話ではない。筆者が講義を持つ成蹊大学でも、近年、その傾向がはっきり強まっている。

以前は入学前にXで「#春から成蹊」と投稿して新入生同士でつながり、親しくなった人とInstagramの鍵垢で交流する使い方がされていた。Xではプロフィールアイコンに顔写真を使わず、ニックネームのみで本名も出さず、個人情報はほぼ出さない。

受講生を対象に毎年取っているアンケートによると、「Xで『#春から成蹊』でつながる」利用をしている学生は、2023年は25.2%と4人中1人だった。ところが2024年は13.2%と減少し、2025年は11.5%と10人中1人まで利用が減っている。

Xの利用率が減っていることも影響しているだろうが、リテラシー教育が浸透した結果、個人情報の管理に注意し、知らない人とつながりすぎないよう気をつける学生が多くなっているのではないだろうか。一方で、SNSの利用自体は変わらず多く、友達とのやり取りもSNSで行われているという。

日本でも未成年のSNS禁止は必要か?

「日本でもSNSが法で禁止される可能性はあるか」と聞かれることは多いが、まず考えられない。日本は表現の自由を重んじる国であり、SNSで問題が多発していても、国が一律に禁止することが本当にいいことだとは思わない。

未成年を性的な目的で呼び出したり裸の写真を送らせたりすることを「グルーミング罪」として罪に問えるようにしたり、ネットでの誹謗中傷で問われることが多い「侮辱罪」を厳罰化するなど、日本でも一定の対策は進んでいる。

SNSを一律で禁止した場合、SNSをセーフティネットとしている子どもたちが行き場所をなくす恐れもある。禁止しても隠れて使う子は後を絶たないだろうし、犯罪の被害にあっても相談できなくなることを考えると、けして良策ではない。

SNSでは多くの問題が起きており、対策が必要なことは間違いない。けれどSNSはもはやインフラ的な使い方をされており、日常生活に深く入り込んでいる。連絡や情報収集のための必須ツールで、それに代わる適切な代替手段がない状態だ。

一律な禁止ではなく、適切な対策とリテラシー教育こそが必要ではないのか。例えば、すでに実施されている通り、SNS上における未成年と成人とのやり取りを制限する「ティーンアカウント」のような仕組みは有効であり、このような対策を増やしていくことにこそ力を入れるべきだ。

リテラシー教育と経験から、子どもたちは多くのリスクを学び、対策するようになってきている。一方的に禁止するより、適切に使えるためのリテラシーを高めるべきであり、保護者がすべきなのはそれを見守ることではないだろうか。

高橋 暁子 成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

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たかはし あきこ / Akiko Takahashi

書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。 SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)など著作多数。『あさイチ』 『クローズアップ現代+』などメディア出演多数。公式サイトはこちら
 

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