個人が機関投資家より「圧倒的」に有利な点 大学財団と個人投資家の共通点
これに対して、エンダウメントはもともと寄付金を基にして設立されているので、債務がなく、永久資本を永続的に運用することが前提となっています。
これがエンダウメントと機関投資家の決定的な違いです。
長期投資の姿勢が可能にした驚異的運用実績
エンダウメントと似たような性格を持つ投資家として、近年、急速に存在感を増しているのがSWFです。これは新興国などの政府が運用資本を出資したファンドですので、借金が原資になっているわけではありません。シンガポールのGIC(シンガポール投資公社)や中国のCIC(中国投資有限責任公司)、アラブ首長国連邦のADIA(アブダビ投資庁)などが有名です。
また、ファミリーオフィスとは、欧米の超富裕ファミリーなどが、一族の恒久的な資産管理を目的に設立した運用形態で、純粋な余剰資産を運用しているので、やはり債務はありません。
エンダウメントのポートフォリオは、リスクを取れない一般の機関投資家とかなり異質です。最近では、SWFやファミリーオフィスの多くも、その運用戦略の合理性と長期的な運用成果のすばらしさから、エンダウメント型投資戦略を志向しています。
エンダウメントのすばらしい運用実績を支えているのは、こうした長期運用が可能な運用資金の性格を十分に生かした運用戦略にあるといえるでしょう。
短期間の成績にじたばたせず、10年間、あるいはそれ以上の期間にわたって運用を継続していくことを前提に、運用戦略を洗練させてきた成果です。本気のぶれない長期投資の姿勢そのものが、イェールやハーバードの驚異的運用実績を支えてきたといっても過言ではありません。
エンダウメントは、運用規模が巨額で、最先端の金融理論にも精通したプロ中のプロが運用を行っていることなど、個人投資家と対極にある存在に思えます。確かにそれは事実です。
しかしながら、運用資金の性格を考えると、借金ではなく、自己資金を長期で運用できるという点で、エンダウメントと個人投資家はとてもよく似ているのです。これは、銀行や保険会社、GPIFなど巨大な機関投資家にはない、個人投資家の強力な武器です。
武器はぜひ積極的に活用しましょう。
それは時間を有効に活用する、時間を味方につけるということにほかなりません。株式投資でも、よく長期でじっと持ち続けることの大切さが説かれます。
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