ヒューゴの不思議な発明 --形を変えていく映画という産業と、形を変えない映画の“心”《宿輪純一のシネマ経済学》

機械人形の修理を進めていくうちに、必要な“ハート型の鍵”を持った少女イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)と、過去の夢を捨ててしまった老人ジョルジュ(ベン・キングズレー)に出会う。あまり書けないが、そのうち、ヒューゴは、それぞれの人生と世界の運命をも変えてしまうほどの秘密のメッセージが機械人形に隠されていることを知る。結果として、そもそも“映画”が持っている重要な役割が再確認されることになると筆者は感じた。
 
 最新のほとばしるような“3D”は見る者の目を奪うような夢の世界、すなわちファンタジーを思わせる。しかし、スコセッシ監督のテーマは“映画”そのものだ。父がヒューゴに遺した機械人形の修理(本当は“発明”ではない)が完了したときに、その機械人形は動き出す。そして「ジョルジュ・メリエス」という署名の入った月の絵、それは世界最初の劇的構成を持った映画『月世界旅行』(1902年)そのものである。その名はイザベルの養父の名前であり、映画界からこつ然と姿を消した、世界初のフランス人の職業映画監督の名前でもある。つまり、映画創世記の監督だったのだ。
 
 ほかにも同じくフランス人のリュミエール兄弟の『ラ・ジオタ駅への列車到着』(1895年)など、初期の映画作品がいくつか登場する。これらの作品は音がない「サイレント映画(無声映画)」だった。このように映画は一般的にフランスで“発明”されたといわれている。



Jaap Buitendijk ©2011 GK Films. All Rights Reserved.

スコセッシ監督はこの主人公のヒューゴのように、年少のときはぜんそくで体は弱く、一人で過ごした。その頃から、映画にのめりこんでいくようになる。スコセッシ監督は本作品を最新の映画技術の3Dで撮っているが、「トーキー映画」(音声付きの現在の映画)に押されていった創世記の「サイレント映画」に重要な位置づけを与えている。
 
 つまり、デジタルや3Dなどの開発といった技術革新で変わっていく映画産業を描いているのではないか。特に、創世記の作品や監督たちに最大限の敬意を払っている。

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