ヒューゴの不思議な発明 --形を変えていく映画という産業と、形を変えない映画の“心”《宿輪純一のシネマ経済学》
しかも、本作品の本当のテーマは、希望を失った人、夢を捨てて落ちぶれた人が再び“夢”を持って元気になっていくことである。それこそ、技術や表現方法で変わらない映画の役割、すなわち最も大事な“映画の心”であると筆者は信じている。
今年のアカデミー賞を見ていて、まさにそのような時代の流れを強く感じた。作品賞・監督賞を受賞した『アーティスト』は、フランス映画であるが、サイレントからトーキーへと移り変わる頃のアメリカ・ハリウッド(!)を舞台に、時代の変化の波に乗れずに凋落するスターを白黒映画で描いている。まさにテーマは同じである。3Dなどで、映画が大きく変化している時期に、映画人の考えることは同じなのか。
筆者がテレビで映画評論をするときに、最後に言う決めぜりふは「映画は2時間の夢」である。つらいこの世に映画はなくてはならないと信じる。だから夢を与えない残虐な映画などはあまり好きではない。
3月1日より公開。
しゅくわ・じゅんいち
博士(経済学)・映画評論家・慶應義塾大学経済学部非常勤講師(4月より)・早稲田大学非常勤講師・ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。1987年慶應義塾大学経済学部卒、富士銀行入行。シカゴなど海外勤務などを経て、98年UFJ(三和)銀行に移籍。企画部、UFJホールディングス他に勤務。非常勤講師として、東京大学大学院(3年)、(中国)清華大大学院、上智大学、早稲田大学(4年)等で教鞭。財務省・経産省・外務省等研究会委員を歴任。著書は、『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、『通貨経済学入門』・『アジア金融システムの経済学』(以上、日本経済新聞出版社)他多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA、facebook:junichishukuwa ※本稿の内容はすべて筆者個人の見解に基づくもので、所属する組織のものではありません。
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