90日間延期にはなったが大混乱は続く…「トランプ関税」が引き起こす危険シナリオ
マッキンリーは、南北戦争に従軍した最後の人物として、オハイオ州から大統領に上り詰めた。1897年に大統領に就任すると同時に、アメリカ史上最高税率となる「57%」の高関税を実施している。その法律的な根拠となったのが「ディングリー法」であり、外国製品に対して「50~57%」という高い関税を発動。国内産業保護を目的とした政策だったが、結果的に国内の物価も25%近く押し上げられたとされている。
マッキンリーは、下院議員時代に同議会歳入委員会の委員長を務め、最高50%の高い関税を可能にする「マッキンリー関税法」と呼ばれる法律を制定させている。この法律によって1896年には1億6000万ドルもの収入をもたらし財政の稼ぎ頭になったという。その後、民主党によってマッキンリー関税法は効力を失うのだが、マッキンリーが大統領選に勝利するや、マッキンリー関税を上回る高関税のディングリー法を制定したというわけだ。
さらに、マッキンリーは1900年には「金本位制」を確立させ、1898年にはアメリカとスペインが戦った「米西戦争」を戦い、勝利している。その結果、アメリカは勝利して「パリ条約」を締結。フィリピンやプエルトリコ、グアムなどを獲得した。マッキンリーは、アメリカを帝国主義に転換させた大統領でもあり、金本位制導入、保護貿易を推進させた。
過去の高関税政策の末路
最近のトランプの言動の中に、グリーンランドの支配やパナマ運河の国営化など帝国主義的な言動が目立つのは、こうしたマッキンリーの影響があるようだ。トランプがなぜマッキンリーにこだわるのかよくわからないが、関税や領土拡張、ナショナリズムといったキーワードが共通すると、歴史学者などは指摘している。
こうした奇抜な政策が、ポピュリズム=大衆迎合主義の発想と似ているのかもしれない。トランプ大統領の頭の中にはマッキンリー時代がアメリカの黄金時代に見えるのだろう。問題は、マッキンリー関税の結果だが、高い関税をかけたことで最高「25%」ものインフレをもたらし、最終的には自由貿易に自分自身で回帰させている。ちなみに、マッキンリー大統領は暗殺されたことでも知られている。暗殺された大統領4人のうちの1人だ。
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