岐路に立つ名門「ダイナース」が挑む"厳しすぎるクレジットカード戦争"、攻めるメガ2社と富裕層強化の独立系を相手に勝ち筋はあるか

クレジットカードの“草分け”はどこに向かおうとしているのか。三井住友信託銀行は4月1日、傘下のクレジットカード会社である三井住友トラスト・カードと三井住友トラストクラブを2025年10月に合併すると発表した。
三井住友トラスト・カードは、主に三井住友信託銀行の顧客向けにクレジットカードを発行する。一方、三井住友トラストクラブは、日本国内において独占的に「ダイナースクラブ」を発行している。医師や弁護士、大企業の管理職といった富裕層を中心に厚い顧客基盤を持ち、そのステータス性に魅力がある。
「ダイナースクラブ」は1950年にアメリカで世界初の独立系決済カード会社として発足。その名のとおり、レストランで食事をする人(ダイナー)の支払いでの使用が当初の主な用途であった。2000年にアメリカのシティコープ(現シティグループ)に買収され、2008年には「ディスカバーカード」などを提供するディスカバー・フィナンシャル・サービシズへと売却された。
日本では2008年以降もシティグループが独占フランチャイズ権を維持し、運営を続けていたが、2015年に不採算を背景に撤退。三井住友信託銀行が約400億円強で買収していた。銀行顧客向けの三井住友トラスト・カードと、富裕層を狙って買収した三井住友トラストクラブ。今回の合併は、それから10年越しの統合となる。
今回の合併によって、システム運用や管理部門の重複排除などを通してコスト構造の改善が期待される。加えて、同じ三井住友トラストグループ内に「三井住友トラストVISA」「TRUST CLUBカード」「ダイナースクラブ」と複数のブランドが併存していた。ダイナースブランドは合併後も存続する見通しだが、合併を機に役割の明確化や将来的な改廃なども選択肢に入ってくる。
「金利のある世界」復活で銀行がカードに本腰
「金利上昇をきっかけに、過去はクレジットカードに関心がなかった銀行幹部が目の色を変えている。カード発行をドアノック(見込み客との接触を図るためのツール)に口座開設してもらいたいようだ」。こう語るのは、大手カード会社首脳だ。
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