しかし、それは間違いだ。不況への突入は、始まってしまったら止まらない。
それは第1に、これまでの好景気がバブルだったからでありそれが失速する、第2に、株式市場の高騰による資産効果も逆回転し、直接的に不況を深刻化させる、第3に、アメリカでは輸入していたものをすぐにはほとんど作れないし、実は長期的にも、いくら作ろうとしても、もはや作れない。ノウハウも人材もなくなり、産業基盤はそう簡単に再構築できないからだ。
これはすでに1970年代から少しずつ失われてきたのであり、バブル的な要素があるハイテクやサービスでぼろもうけするしかないアメリカの巨大企業には、まじめに製品を作る、あるいは誠実で妥当な価格のサービスを行うということはできなくなってしまっているからだ。不況はもう止まらないのであり、関税をいつ撤回してももはや遅いのである。
「脱アメリカ」で中国やアジア路線に戻るしかない?
しかし、それよりもはるかに深刻なのは、アメリカ市場を中心に企業戦略を立ててきた世界中の有力企業が、「アメリカ市場はないもの」と思って、同国以外の世界だけでやっていけるように戦略を立て直すことだろう。もちろん、アメリカ国内に生産基盤を移す企業もあるだろう。だが、アメリカ以外に戦略転換する企業はそれよりはるかに多く、多数派となるであろう。
そして、これは、中国をさらに強くする。それは自明の理だ。いまや、質の良い製品を作る拠点は中国、コストを安く作るなら、その周辺のアジア諸国というのが、世界の常識である。それがさらに加速する。なぜなら、市場として伸びているのは、世界ではアメリカとアジアだけだからだ。
現時点でたとえ中国が弱っているとしても、国の規模は依然大きく、また復活してくれば、欧米諸国よりは高い経済成長の伸びとなるだろう。そして、その周辺のアジア諸国経済も伸びている。したがって、トータルで考えれば、アメリカよりも、もともとアジアなのである。中国を敵とみなして除外すればアメリカしかないが、「もはやアメリカは無理」となれば、中国およびアジアに戻らざるをえない。
実際、この大チャンスをとらえて、中国は動いている。もともと経済不調、構造的転換期の危機を乗り越えるために、中国は少なくとも経済的には対外的にフレンドリーな動きをここ数年してきた。今回、習近平主席は世界中の巨大有力企業のトップを多数同時に北京に招き、大歓迎した。これは報道されているとおりである。もちろん日本のトヨタ自動車も日立製作所も、トップが行った。欧州も、ヴァンス副大統領の振る舞いで「アメリカからの離別」が感情的に決定し、今回の関税でビジネス的にもアメリカ離れ、アジア頼みとなっていく動きが出ている。
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