神戸製鋼の時価総額は、なぜ半減したのか 屋台骨を襲った2つの"想定外"
神戸製鋼の建機事業は中国に2つの生産拠点を構えている。そのうち、組み立て工場は需要低迷を受けて「8月は稼働停止、9月もほぼ停止状態」(建機部門の首脳)。例年、販売の最需要期に当たる春節(旧正月)に向けて10月から稼働を本格化させるが、「2016年に底を脱するかは見通せない」と同首脳は暗い見通しを語る。
そもそも神戸製鋼は4月の期初計画の段階で、建機事業の利益を前期比4.7%減と公表していた。同じ段階で同業のコマツが8.7%減、日立建機が14.5%減と予想していたことに比べれば、やや強気だったといえる。
実は、神戸製鋼は「(中国減速など)不確定要因を織り込む」(梅原尚人・副社長)という理由で、調整額にマイナス90億円ほどの費用を積んでいた。そして、7月の業績予想修正では、建機事業の利益見通しを200億円から100億円に減額する一方で、調整額を110億円改善させ、4月に掲げた当初予想を据え置いていた。
その理由について梅原副社長は「懸念していた不確定要因が表面化した」と説明している。本来、調整額は本社費用の配分や社内取引の相殺といった用途に使われている。業績予想は、決算発表ほど厳密な会計方針が適応されているわけではないが、不確定要因を調整額に織り込むのは「聞いたことのない方法だ」と同業の鉄鋼メーカー幹部は首をひねる。
ただ、9月の段階で想定以上の中国の販売不振に加え、鉄鋼事業の生産トラブルというダブルパンチが直撃、会社が「へそくり」(同社幹部)とみていた調整額を使い果たしたことで、業績の下方修正に追い込まれた。
中国減速の逆風に耐えられるか
建機も鉄鋼も神戸製鋼の屋台骨を支える主力事業だが、どちらも景気変動の影響を受けやすい。業績下方修正の後、同社の川崎博也社長は「厳しい経営環境でも構造改革を進める姿勢に変わりはない」と宣言している。
同社は利益が安定的に見通せる発電事業を、“第3の柱”に据える計画で、真岡製造所(栃木県真岡市)や神戸製鉄所(神戸市)でそれぞれ大型の発電所を稼働させる予定だ。
とはいえ、発電所が稼働するのは2019年以降とまだ先のこと。中国の景気減速という逆風の中、向こう数年間をどう乗り切っていくのか。容易ではないことは確かだ。
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