「全品270円」でかつては大人気、居酒屋「金の蔵」が今では“残すところ1店舗”の理由とは?現地&社長取材から徹底分析

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「私が入社した2007年頃は、とにかく繁盛店ばかりで忙しく、良い時代でしたよ。営業中は水を飲む暇もなく、ご予約のお客様をお待たせしないよう、バッシング(席の片付け)も数分以内を徹底。開店から深夜2時まで駆け抜けるような日々でした。200坪近くの大箱が何回転もして、月の賃料300万円を、1日で回収できる日も珍しくなかったですね」

かつて全盛の記憶を振り返るのは、サンコー現社長の長澤成博氏だ。

長澤氏が入社した2007年、サンコーは、『東方見聞録』や『月の雫』ブランドを展開していた。客単価3500円前後ながら、ゆったり空間を確保した個室居酒屋は当時珍しく、社を上場まで押し上げる旗艦ブランドに成長していた。

しかし2008年、100年に1度の大恐慌、リーマンショックが訪れる。財布の紐が堅くなる時世では、客単価3500円の業態は敬遠された。

客単価2000円で大成功

そこで、全品270円均一を謳い文句に、2009年に参入したのが金の蔵だ。『東方見聞録』や『月の雫』の箱をそのままに、客単価2000円を目指して、ガラリと路線変更に踏み切る。当時珍しかったタッチパネルや、ジョッキを置けばビールが注がれるサーバーを導入。焼き鳥は冷凍串を仕入れて仕込みをなくし、料金計算が必要ない均一価格形態を敷いて、徹底的に省人化を進めた。

カキフライ4個に、生ビールが270円ーー。リーズナブルな価格設定は、たちまち市井の心を掴んだ。サンコーは、山手線の内側にドミナント出店を行い、2011年には一気に97店舗まで拡大。一時、新宿エリアでは、150坪を超えるグループ店舗が30近くも乱立したそうだ。

ただ、当然ながら、大量出店の勢いを維持するのは至難の業だ。エリア内でのカニバリや、コンセプトを真似た競合も台頭し始める。働き方改革や、職場内のハラスメント問題が取り沙汰される世相的な流れも、宴会需要の減少を招いた。

東京チカラめし
かつて大量出店で話題となった「東京チカラめし」もサンコーが運営。現在は「大阪日本橋店」のみ営業中(ほかに「東京チカラめし食堂」名義で1店舗あり)。写真は2016年閉店の人形町店。金の蔵も同じビルに入居していた(2011年11月25日、東洋経済記者撮影)
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