災害弱者への新たな支援策、「訪問看護1人開業」が高齢者の孤立を防ぐ

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仮設住宅での生活の苦難

震災の発生から1年近く経った現在も、被災した住民の生活は困難を極めている。前出の通称「市営テニスコート住宅」では、1月に入って最低気温が零下10度を下回り、住宅内の水道管が凍結した。そのため、トイレや洗濯機を使えなくなった世帯が続出。自治会長の佐藤和一郎さん(64)は、脚の不自由な高齢者宅に、段ボールでにわか作りしたバケツに水を入れて運んだ。

テニスコート住宅では防寒対策が大幅に遅れた。水道管の凍結防止策として、工事業者が仮設住宅の基礎部分に風よけのシートを張り終えたのは2月初め。現在も、仮設住宅の通路に通水性のよいアスファルトを敷き詰める舗装工事が続いている。

仮設住宅の住民を悩ましているのが、住宅内の湿気だ。フローリングの床に敷いておいただけで、湿気で布団がカビだらけになる家庭が続出。布団を干す場所も乏しく、大きな問題になっている。

こうした苦難に直面しながらも、一人の孤独死も出さずに済んでいるのは、住民が懸命に助け合っているためだ。そして住民を外から支えているのが、看護師などのボランティアだ。現在、キャンナス東北の岸田広子看護師(41)は、週に1度の割合で宮城県石巻市内の事務所からテニスコート住宅を訪問している。

応対した自治会長の佐藤さんや、被災前から長年にわたって民生委員を務めている小野道子さん(69)の紹介によって、岸田さんや菊池さんは気掛かりな独り暮らしの高齢者宅を1軒ずつ訪問。慢性疾患や認知症を患う高齢者の情報を、市の保健師や市が新たに設置した「応急仮設住宅入居者等サポートセンター」の職員に伝達する役割も担っている。

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