いしだあゆみさんの死因「甲状腺機能低下症」 過労や加齢のせいと誤解されがちな病気だが、そこにある”隠れた危険性”とは?【医師が解説】

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繰り返しになりますが、甲状腺機能低下症は一般的に治療可能な病気です。定期的な血液検査でホルモンの状態をチェックし、必要に応じて甲状腺ホルモン補充療法を継続することで、粘液水腫性昏睡のような危険な病気を防ぐことができます。

甲状腺の病気は検査してみないとわからないことも多いので、体調の異変や違和感を覚えた際には早めに医療機関を受診することが大切です。

万が一、診断されたとしても日々の健康管理を怠らず、甲状腺ホルモンの特徴と症状の変化をよく学んで定期受診で甲状腺のケアを忘れずに行うことで、安心して生活を続けることができます。

ただし、治療を中断すると、知らず知らずのうちに病態が進行してしまうため、自己判断で薬をやめることは避けるべきです。

甲状腺機能低下症をお持ちの方は、冬場には寒さから身を守る工夫をし、低体温にならないように注意することが望ましいです。

さらに、感染症が発症の引き金となることが多いため、ワクチン接種などを通じてインフルエンザや肺炎などの予防策を講じることが、リスクを下げるカギとなります。

海藻と甲状腺機能との関係とは?

なお、日本では海藻をたくさん食べるため、世界的にもヨウ素の摂取量が高い国の1つです。ヨウ素は甲状腺ホルモンの生成に不可欠ですが、摂りすぎると逆に甲状腺の機能を抑制し、甲状腺機能低下症を引き起こすことがあります。

実際、日本の沿岸部の一部の地域では、長年にわたる海藻の大量摂取により、ヨウ素過剰による甲状腺機能低下症が報告されています。

日常的なヨウ素の推奨量は、1日0.13〜3.0mgとされており、たとえば乾燥わかめだと1日10g前後までにとどめるなど、注意が必要です 。

日本では欧米に比べて甲状腺疾患の認知度が必ずしも高くなく、定期健診などの項目に甲状腺ホルモン検査が含まれていないことも多いので、見逃されることも少なくありません。

もし最近、理由もなく疲れやすい、寒がりになった、頭の働きが鈍くなったと感じるなら、それは単なるストレスや加齢ではない場合もあります。

健康な甲状腺を維持することは、仕事のパフォーマンス向上だけでなく、命を守ることにもつながります。検査自体は内科クリニックなどで比較的簡単にできるので、より良い健康管理のために、甲状腺の病気にも目を向けてみるとよいでしょう。

谷本 哲也 内科医

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たにもと てつや / Tetsuya Tanimoto

1972年、石川県生まれ。鳥取県育ち。1997年、九州大学医学部卒業。医療法人社団鉄医会ナビタスクリニック理事長・社会福祉法人尚徳福祉会理事・NPO法人医療ガバナンス研究所研究員。診療業務のほか、『ニューイングランド・ジャーナル(NEJM)』や『ランセット』、『アメリカ医師会雑誌(JAMA)』などでの発表にも取り組む。

 

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