東京電力・偽りの延命、なし崩しの救済《2》--原理主義者とリアリスト

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「社債権者からすれば、KDDI株式の売却などで資産が大きく劣化している。1年前ならともかく、法的整理をするにはもう遅すぎる。社債権者にとっては訴訟ものだ」(BNPパリバ証券の中空麻奈チーフクレジットアナリスト)

法的整理することで、東電が“焼け太り”しかねないという指摘もある。日本航空のように会社更生法を適用すると、東電は銀行からの融資などの債務をバッサリ切ることができる。さらには確定済みの損害賠償債務も免責されるため、東電は一気に身軽になるからだ。

「『東電憎し』のつもりで会社更生法を適用すると、逆に、東電は思い切り免責される。経営陣こそ入れ替わるが、会社の形態は変わらず、財務内容は劇的に改善する。あとの賠償は国がすべて払います、では、国民感情が許さないだろう」(企業再生専門家)

そうなると、現行の原賠機構スキームで進むよりほかない。

電力の安定供給を維持する一方で、東電が主体となって賠償を全うし、かつ、国民や電気利用者による負担を最小限に抑えるにはどうしたらいいのか--。ベストでないにせよ、ベターな方法を探る中で、機構がひねり出したのが法的処理を伴わない国有化スキームなのである。

(週刊東洋経済2012年2月18日号より)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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