ロシア経済、潜在力は魅力だが、見えない「近代化」策

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WTO加盟で一部関税の引き下げ・撤廃も行われ、紛争処理でも海外企業のリスクは減るが、農業団体や航空機産業などWTO加盟に反対する声も小さくはない。そのため、選挙を前にプーチン首相も経済問題に関して発言を控えているようだ。

唯一、ロシアの経済誌『ベドモスチ』に寄稿した論文でプーチン首相の今後の経済政策が垣間見える。エネルギー部門などへの国家の関与を弱め、経済の諸問題は仲裁裁判所に移管すべきと主張しつつも、「韓国や中国の成功は、国家の後押しによる効果が過ちを犯すリスクを上回る」と示している。今後も、国家権力による経済関与を続ける意志が見える。

とはいえ、モスクワ、サンクトペテルブルクを中心に、トヨタや日産など自動車メーカーやコマツ、日立建機といった企業がすでに展開。ユニ・チャームなど日用品メーカーの進出も進んでいる。ロシアはガスタービンやLEDライト、低燃費の自動車など、エネルギー効率化に関連する企業や、医療機器・製薬などバイオ関連事業の進出を望んでおり、日本企業にも潜在的魅力はありそうだ。

市場としての潜在力は誰もが認めるが、そこをどう攻略するか。ロシア側がどこまで外国企業を受け入れるかを見極めながら、慎重にビジネスを進めていく必要があるだろう。

(週刊東洋経済2012年2月18日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

photo:Bradmoscu CC BY-SA

 

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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