これは簡単に答えを出せる問題ではない。挑発を繰り返すのが国益にならないことは、そろそろ金正恩もよく分かっているだろう。たとえば、2013年に彼が好戦的な態度を示したことで米中韓との関係は一気に悪化した。先日の危機で彼が得たのは拡声器による宣伝放送の停止くらいだ。しかし、金正恩は必ずしも、現実主義路線や外交で知られる存在ではない。
金正恩の意図は、すぐにより明確になるかもしれない。北朝鮮は10月にも、この国を支配する朝鮮労働党の創建70周年を記念して、核実験を行い新しい大陸間弾道ミサイルを発射すると見られている。しかし、対北朝鮮政策の足並みが従来以上にそろってきている米中韓は、ただ単に事を見守っていてはならない。3国は北朝鮮との対話を開始し、金正恩が敵対の道に進み続けるのを思いとどまらせる策を講じるべきだ。
3つ目の新展開は、北朝鮮国民の間で国の惨状への関心が高まっている点だ。現時点でこの変化は、非武装地帯にいる北朝鮮の兵士の間で最も顕著だ。最近の韓国の宣伝放送は彼らの士気を下げる効果が大きかったのだ。
今の若い兵士は、1990年代中頃の大飢饉後の市場経済化の中で成人を迎えたいわゆるジャンマダン (闇市) 世代である。韓国の映画や音楽その他に触れて彼らは、政府のプロパガンダと国の恐るべき現実との間の大きなギャップに気付いている。
市場経済化が進むにつれ、体制のプロパガンダを見破るのは兵士だけではなくなるだろう。北朝鮮で下からの変化が起こるのはそう遠くないのかもしれない。
新たな政策オプションの可能性
このことは西側にとって、新たな政策オプションの可能性を開く。つまり、世界のほかの国々との経済的・社会的な関わりを深めさせ、北朝鮮に外交や安全保障の針を戻させるのだ。北朝鮮が受ける恩恵は、体制の戦略的計算、特に核兵器に関する方針を劇的に変化させる可能性がある。
国際的なつながり自体よりも、そのようなつながりがもたらす恩恵を妨げていた制裁は、リビアが核を放棄する決断をし、イランが核開発に関して世界の大国と合意する意向を示す上で、極めて重要だった。制裁は北朝鮮ではあまり効果を発揮してこなかったが、その主な理由は、国民が自分たちが失っているものを知らなかったからだ。
ソ連圏と西側諸国との間でつながりができたことは、1975年のヘルシンキ合意に至る上でも大きな役割を果たした。この合意は冷戦期の東西関係を改善する努力の象徴となり、人権に重きが置かれた。最も重要なのは、この合意がある種の持続的な関わり合いをもたらした点であり、これこそが現在の朝鮮半島で大いに求められているのだ。
8月危機の直後は、北朝鮮に対する継続的な制裁と、より深い経済的・社会的つながりのバランスをいかに取るか真剣に考えるべき時期なのかもしれない。このような取り組み抜きでは、南北はまた遠からず軍事的対立に陥る可能性がある。次は今回ほどうまく収拾できるとは限らない。
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