「iDeCo」制度改正に潜む"国民負担増"の皮算用 今に始まったことではない「国の姑息な手口」
3つの改正ポイントのうち、掛け金の上限額引き上げについては手放しで歓迎できるものでしょう。
現行制度で65歳までとなっている加入可能年齢を70歳未満まで引き上げという見直しについても、定年後も働き続ける人が増えていますし、有利な条件で老後資金の積み立て投資を続けられる期間が延長されることは望ましいことでしょう。
受け取り時の「5年ルール」が「10年ルールに」
今回、ブーイングが飛び交っているのは、受け取り時のルール変更についてです。iDeCoで運用した資金は60~75歳の間で希望する時期に受け取りが可能で、一時金として一括で受け取る場合には「退職所得控除」、年金的に分割で受け取る場合には「公的年金等控除」が適用され、その分だけ税負担が軽くなります。
これらのうち、「退職所得控除」の控除額は勤続年数(iDeCoの場合は加入期間)によって変わってきます。さらに、退職金とiDeCoの一時金を受け取るタイミングの違いによっても、控除額が異なってくる仕組みになっています。
退職金よりも先にiDeCoで一時金を受け取る場合、現行制度では「5年ルール」というものが適用されるのです。これは、iDeCoの一時金支払いから5年以上たってから退職金を受け取るのであれば、税制上の優遇をフルに受けられるというものです。
この条件を満たせば、退職金にかかる所得税が最大限に控除されますが、5年未満だった場合は控除額が減少してしまいます。
今回の税制改正によって、この「5年ルール」が「10年ルール」に改められました。仮にiDeCoの一時金が60歳時に支払われたとすると、現行では65歳以降に退職金を受け取れば最大限の控除を受けられました。
しかし、2026年1月から「10年ルール」が導入された後は、70歳以降の受け取りでなければ控除額が減少してしまいます。
かつては60歳が主流だった企業の定年退職年齢は、公的年金の支給開始年齢引き上げに伴って65歳へとスライドしてきました。「10年ルール」の導入は、公的年金のさらなる支給開始年齢引き上げ(ひいては定年退職年齢の引き上げ)を念頭に置いたものかもしれません。
資産運用においても、こうした国の意向を考慮しながら、出口戦略を練っていく必要があるでしょう。
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