「iDeCo」制度改正に潜む"国民負担増"の皮算用 今に始まったことではない「国の姑息な手口」

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とはいえ、「特別保険料」の負担は労使折半でボーナスに対して1%(給与所得者の負担は半分の0.5%)で、「総報酬制」のほうがはるかに負担が大きくなるものです。

「総報酬制」が導入された直後は大騒ぎになったのですが、いつの間にかボーナスの額面と手取りに大きなギャップがあるのは当たり前のことになってしまいました。

なお、ボーナスからも社会保険料が徴収されるようになったのは、一部の企業の間で"保険料逃れ"を目的に支給額を調整する動きが見られたからです。「総報酬制」の導入前は、結果的には総額で同じ年収を支払うとしても、月給額を少なめにしてその分をボーナスに上乗せするという調整を行うことで社会保険料の負担を軽減できました。

社会保険料の負担は労使折半なので、企業側も従業員側も軽減できるのに越したことはありません。そこで、双方の合意のもとに月給とボーナスの支給額を意図的に調整するケースが相次ぎ、そういった操作を行っていない企業との間では不公平感が募っていました。

こうした背景の下で導入されたのが「総報酬制」で、決して国民に対して負担増を強いるものではないというのが当時の国の見解です。導入に並行し、厚生年金の保険料率も17.35%から13.58%に引き下げられ、その分だけ毎月の給与から天引きされる社会保険料も減額されました。

とはいうものの、その後に厚生年金の保険料率は段階的に引き上げられ、2017年9月には18.5%に達しています。

結局は「総報酬制以前」よりも高くなっていますし、まとまった金額の支給であるボーナスからの徴収分も含めれば、導入前と比べて明らかに負担は大幅に増えています。

「iDeCo見直し」の背景に潜むもの

一方、公的年金を補完する私的年金制度としてiDeCo(個人型確定拠出年金)が存在しており、2025年度の税制改正に伴って実施される制度見直しの一部が「改悪」であるとの批判が高まっています。

大幅な見直しのポイントとしては、①掛け金の上限額引き上げ、②加入可能年齢の引き上げ、③受け取り時のルール変更が挙げられます。

同制度は、毎月の掛け金がすべて所得控除の対象になってその分だけ所得税の負担が抑えられるうえ、運用によって得られた利益も非課税扱いになり、60歳以降に受け取る際にも「退職所得控除」や「公的年金等控除」を利用できるという税制上の優遇策が盛り込まれています。

つまり、税制が優遇されていることによって、通常よりも有利に老後の備えを準備できる制度だということです。

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