「iDeCo」制度改正に潜む"国民負担増"の皮算用 今に始まったことではない「国の姑息な手口」
当時はデフレが進んで物価が下落し続け、現金の価値が高まっていったので、本来なら給付額を減らさなければならないのに、国はまったく調整を行わなかったのです。その結果、10兆円に近い金額の年金が過払いされることになりました。
当然ながら、こうした過払いは年金財政を圧迫します。さらに少子高齢化が進んで財政事情が苦しくなっていくことは、もはや誰もが認識していることのはずです。
今の現役世代が老後を迎えた頃にも、過去と同じく過払いのような大盤振る舞いの給付を行うのは、到底不可能だといえます。一刻も早く、「国が守ってくれる」という幻想は捨て去ったほうが賢明でしょう。
税金以外のやり方で増加する「国民負担」
日本のように財政が著しく悪化した国がその状況を打開する策としては、インフレ誘導と増税という2つの手段があります。
これらのうち、インフレ誘導はアベノミクス政策の一環として黒田日銀が力を入れてきたものの、コロナ禍を抜け出した頃から日本でも顕在化している物価上昇は金融政策の賜物ではなく、グローバル経済の影響にすぎません。
残る増税については、コロナパンデミックの前年に当たる2019年に消費税引き上げ(8→10%)を実施しましたが、その後はインフレで国民の生活が圧迫されていることもあって、真正面からの大掛かりな策は打ちづらいのが実情でしょう。
そういった事情もあってか、ステルス増税と呼ばれる姑息な手段を講じたり、税金とは異なる方式で「国民負担」を増やしたりするケースが横行しています。
ステルス増税とは、レーダーに感知されにくいステルス戦闘機のように、国民の負担が実質的に増えることを察知されないように取り繕った増税策のことです。
その典型例に挙げられるのが「復興特別所得税」で、2013年から所得税に2.1%を上乗せする形式で国民が負担しており、本来なら2025年で徴収期間が終了予定でした。ところが、税制改正に伴って2037年まで延長されることが決まっています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら