東洋水産CM「他企業への延焼」一体なぜ起きたか 「交流した企業もNG」判定基準は厳しすぎるが…

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タニタやサッポロビール、フジッコといった企業が、このタイミングで、マルちゃんアカウントをフォローしたと明かされたことで、なかには「不買運動」まで呼びかけるユーザーまで登場した。なお、こちらについても「やりすぎだ」といった声は少なくない。

東洋水産をリポストする株式会社タニタ
(株式会社タニタ/Xより)
東洋水産に返信するサッポロビール
(サッポロビール SapporoBeer/Xより)

個人や企業の振る舞いを受けて、世間から排除しようとする「キャンセルカルチャー」は、いまや珍しくない。SNSが普及し、世論の可視化が進んだことにより、その声は大きくなり、より先鋭化した印象がある。

とはいえ、さすがに相互フォローやSNSでの交流を理由に、他社製品の不買運動にまで広がるケースは、これまであまり見られない光景だ。これが取引関係のある企業なら、まだ構図としてわかりやすい。

ただ、これらはあくまで広報部門のコミュニケーションであり、名刺交換の延長線上にあるような存在に感じられる。

そのため、筆者は「バッシングが行きすぎている」と考えているのだが、一方でネットメディア編集者として10年以上、企業のSNS活動を見てきた立場としてみると、これが「『中の人』コミュニケーション」の難しさだよなと、妙に納得する部分もある。

この場合の「中の人」とは、SNS運用担当者を指す。もともとは、着ぐるみなどのキャラクターに対して「『中の人』はいない」などと用いられていたが、後に企業の広報担当にも広がった単語だ。

「中の人」を前面に出した企業SNSの特徴は、大きく「担当者の人柄やセンス」と「企業間のコミュニケーション」にある。当然ながら、自社商品やサービスにも触れつつではあるが、どちらかというと、広報担当者の日常に重きを置くパターンが多い。

そして、通常であれば接点のない異業種や、時にはライバル企業とも、フランクな口調でコミュニケーションをとる。

「中の人」を前面に出す手法が抱えるリスク

こうした「中の人」を通した広報戦略は、お堅いイメージのある大企業ほど、そのギャップから、新規の購買層を掘り起こせる可能性を持っている。

一方で、広報担当者の個性に依拠することによるリスクも抱えている。これまでも、他社製品やユーザーをこき下ろすような発言を行うことで、活動休止や削除に追い込まれたSNSアカウントは少なくない。

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