東洋水産CM「他企業への延焼」一体なぜ起きたか 「交流した企業もNG」判定基準は厳しすぎるが…

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加えて、企業公式SNSには「運用担当者の自我が出過ぎているのでは」といった視線が、つねに向けられる。

「中の人」を前面に出す手法は、ファンコミュニティーを形成して、「友達からのオススメ」的な感覚で、購買意欲をかき立てることが目的になりがちだ。すると、消費者への「こび」もしくは、内輪ノリが常態化する可能性が高い。

しかしながら、SNSを見ているのは、ファンだけではない。たとえファンが「個人的な発言」とみなしても、一般ユーザーは「企業の公式見解」として認識する。「中の人」の言動が世間と合致していればいいが、少しでも違和感が見えてしまうと、一気に企業イメージそのものが悪化しかねないリスクを抱えている。

そこですぐさまギャップに気づければいいが、それでもなおファンのみに目が向けられているように感じさせてしまえば、それ以外の消費者を無視しているような印象を与えてしまう。「井の中の蛙」にならないよう、つねに気を配る必要があるのだ。

これらのポイントは、昨今話題のフジテレビをめぐる騒動とも通底している。

放送局サイドが面白いと感じるコンテンツが、徐々に視聴者の求めるものと離れていったにもかかわらず、一部のファン(もしくは離れるタイミングを失っていた視聴者)ばかりを見てしまった結果、あるきっかけから一気に人が離れてしまった。発信者が主導権を握るコミュニケーションは、受け手の機微をしっかりつかむ必要がある。

今「フォロワー数の増加」を喜ぶ投稿は得策ではない

加えて、「ファンがいつまでもファンだとは限らない」という懸念もある。基本的にSNS上のコミュニケーションのみであることから、それ以外の人物像はファンが想像して補完する必要がある。

そこでもし、頭の中に描いた「中の人」イメージと異なる文面が投稿されれば、一気に幻滅してしまい、場合によってはアンチに転向する。

こうした理由から、「中の人」によるSNS運用は、非常に難しい広報戦術だといえる。気軽に始めやすく、成功例も多々あるのだが、そのぶん時代の風を読む力と、いざという時の瞬時の判断が求められる。「ファンが増えて、チヤホヤされたら、それでOK」といった、ゆるふわな世界ではない。

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