ビル新築ラッシュで広がる2次空室の波紋

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テナント引き留めへ 賃料を大幅値下げ

ただ新しいビルの大量供給の裏側で、顕在化し始めた問題がある。企業やビルテナントが新築ビルに移転することで発生する「2次空室」の増加だ。不動産業界では、かねてから「2012年問題」として懸念されてきた。実際、足元の都心部の空室率は7%台で高止まり。平均賃料も下落傾向が続く(図)。

06~08年ごろであれば、日本経済全体が堅調に推移する中で、オフィス拡張のための移転需要が拡大。新規ビルの供給が今より少なかったため、2次空室を埋めるのも比較的容易にできた。さらに需要の拡大を受け、「本来なら空室になるはずだった既存ビルが、建て替えの対象となって取り壊されて、空室が一時的に減った」(事業用不動産サービス会社、シービーアールイーの渡辺善弘・ビル営業本部長)こともプラスに働いた。その結果、都心5区の平均空室率は08年半ばまで低い水準となっていた。

ところが、リーマンショックを境に状況は一変する。これまでとは逆に、賃料負担軽減を狙った移転ニーズが高まると、既存のビルオーナーはテナント引き留めのために大幅な賃料引き下げを提示。そのあおりを受け、新築にもかかわらずテナントが埋まらないビルが出るなど、空室率も上昇した。今後のビル開業ラッシュで供給過剰が膨らめば、市況の悪化が加速する可能性がある。

 

 

 

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