ビル新築ラッシュで広がる2次空室の波紋
新橋では過当競争 苦しむ中小ビル
それでも、東京駅周辺のような一等地はまだ恵まれたエリアかもしれない。立地のよさから、賃料さえ下げれば埋められる可能性は十分にあるからだ。
厳しいのは、新橋など都心の一等地の周縁部。特に中小ビルのオーナーには強烈な逆風が吹いている。「坪単価1万円を切ってもテナントが決まらないビルが出てきた。一昔前なら、エレベーターが付いていない物件の値段だ」。新橋を中心にビル仲介を手掛けているダク・エンタープライズの阿部龍治社長は、中小ビルオーナーの声をこう代弁する。
需要の減少だけでなく大手不動産会社による侵攻も激しい。2次空室の増加に苦しみ、広めのフロアをパーティションで仕切って小規模オフィスに衣替え。中小のビルと同じくらいの面積、坪単価にし、共用部の設備のよさを売りにテナントを奪っているのだ。
これに対抗するため、建て替えによる賃料アップを狙う方法もあるが、資金力に乏しいうえ、需要が冷え込んでいる中での投資には及び腰。中小ビルオーナーの中には、「家賃回収などでリスクは伴うが、中国系企業の取り込みにも力を入れていかざるをえない、と考える人も出てきた」と、阿部社長は言う。
大手の不動産会社にしても、市況低迷が続く中、最優先するのは一等地の再開発や稼働率の向上。周縁部での物件取得や建て替えは、二の次になってしまう。一等地との二極化は一段と鮮明になっている。