琺瑯は、鉄にガラス質の釉薬を焼き付けたものだ。金属にガラス質を焼き付ける技術は古く、そのルーツは紀元前1300年頃のツタンカーメンの黄金マスクにあると言われる。
野田琺瑯(東京都江東区)は、そんな琺瑯一筋で歩んできた創業81年の老舗企業だ。今も工程の多くを職人の手に頼り、小ロット多品種生産の製造を行う。家庭用品を始め衛生用品や理化学用品を製造しているが、特に自社のルーツともいえるのが、創業当時から作り続ける青の「ホーロータンク」だ。戦後のモノのない時代に業務用・家庭用ともに大きな需要があったという。
ブレイクスルーを作ったのは主婦目線だった
国内の琺瑯業界は1971年頃をピークに引き出物やギフト需要で沸いた。しかし、90社以上もあったメーカーは、樹脂などの新素材の登場で激減した。現在は3社のみとなり、生地から作れるのは同社だけだ。しかし、同社も業界不況により、1994年には東京工場を閉鎖し、栃木県に製造拠点を集約するなど苦しい時期が続いた。
長い冬の時代を打開したのが、2003年発売の「ホワイトシリーズ」のヒットだった。この開発者も、善子さんだ。「私、琺瑯バカなんです」と、笑う善子さん。生き生きと夢中で琺瑯について語る姿からもその“琺瑯愛”はあふれんばかりに伝わってくる。だが、ヒットの要因はそれだけではないだろう。
実は、野田家の生活道具は、ほとんどが琺瑯だそう。社長とのご結婚以来、46年間、善子さんは毎日食事の準備に琺瑯を使ってきた。商品開発に携わるようになったのは、次男の高校入学を機に入社してからだが、それ以前からずっと台所で研究開発を行ってきたようなものなのである。
「周囲からは売れないと言われましたが、キッチンは色であふれているから主張しない白がいい!」「スタッキングできないとイヤ」――この細部にこだわる鋭い主婦目線が、同社を支える2トップの商品を生み出した最大の秘訣といえる。「今後も自分の欲しいものや使いたいものを作り続けたい」と、善子さん話す。
善子さんは、「食」が何よりも大切だと考えている。「忙しい人の食生活の手助けができたら」という思いで、今日も開発に勤しむ。今回紹介した「ぬか漬け美人」は、まさに忙しい現代人の食生活をサポートするお助け商品だ。特に時間がなく加工食品に頼りすぎ、体調が優れない人などにオススメ。少し手をかけ食生活を正すと、頭と心の能率が上がり、結果的に「時短」になることを実感できるのではないだろうか。
(撮影:尾形文繁)
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