日本理化学工業はなぜ知的障害者を雇うのか 幸せを提供できるのは福祉施設ではなく企業

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大山 泰弘(おおやま やすひろ)/1932年生まれ、中央大学卒業。父親が戦前に設立した日本理化学工業に後継者として入社。74年、社長に就任。60年に初めて知的障害者を雇用して以来、一貫して障害者雇用を推進。2008年より現職。著書に『働く幸せ 仕事でいちばん大切なこと』(WAVE出版)など

わが社では、「周囲に迷惑を掛けたら、就業時間中でも家に帰します」と約束しているのですが、ある男性はちょっと気に入らないことがあると暴れ出すため、就職から2年間で30回以上も家に帰されました。

親御さんには「本人の口から『もうしません』という言葉が出たら、翌日からまた会社に来ていいですよ」と伝えてあるので、しばらくすると彼も再び会社に来るのですが、結局はまた暴れてしまう。

それでも、最初は週に1度だったのが、やがて2週間に1度になり、1カ月に1度になって、間隔はどんどん伸びていく。私は彼が確実に成長していると感じました。そして今では、彼はまったく問題行動を起こさなくなり、それどころか後輩社員の面倒を見てあげるまでになったのです。

女性にとっては子育ても立派な“仕事”

彼が成長できたのは、やはり「働く幸せ」を求めていたからでしょう。家に独りぼっちでいると、「会社に行って役に立ちたい」「皆から褒められたい」といった欲求が涌き上がってくる。ある脳神経外科の教授は、その理由を「人間は“共感脳”を持っているからだ」と教えてくれました。

人間は一人では生きられない動物であり、群れの中で周囲に支えられて、初めて生きられる。そして支えてもらうためには、自分も周囲の役に立つことが必要になる。つまり人間は、「人の役に立つこと=自分の幸せ」と感じる脳を持っているのだというのです。この話を聞いて、私はあの住職の言葉はやはり正しかったのだと、改めて実感しました。

もし皆さんが、仕事をしていても幸せを感じられないのなら、自分が働くことでどのように人の役に立てているのか、今一度見直してみてください。時には会社や上司に不満を抱くこともあると思いますが、仕事を通して誰かの役に立つことそのものが、自分自身の幸せにつながっているはずです。

ただ、女性が社会に出て働くことについては、少し違った思いもあります。

今年83歳になる私が、あえて本音を申し上げるなら、女性にとっては「子育ての役割」や「家族の生活を支える役割」を果たすことも立派な“仕事”であり、人の役に立つことなのだと思うのです。特に子育ては、日本という国を支える大事な国民を育てる仕事ですから、社会全体のために役立つ仕事でもあるわけです。

もちろん会社で働くことは意義のあることですし、世の中もそれを求めています。経済的な事情から、共働きを余儀なくされている人が多いことも分かります。ですが、「仕事と家庭は両立しなければならない」という思いが、どうも先行しすぎているように思うのです。
だからこそ若い女性たちには、子育てが大事な仕事であることをしっかり認識したうえで、将来をじっくり考えてもらいたい。どんな結論が出るにせよ、「自分はどんな形で人の役に立ちたいのか」を考えることが、きっとその方の人生を幸せへと導いてくれるはずです。

(取材・文:塚田有香/撮影:竹井俊晴)

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『Woman type』編集部

「Woman type」は、キャリアデザインセンターが運営する情報サイト。「キャリア」と「食」をテーマに、働く女性の“これから”をもっと楽しくするための毎日のちょっとしたチャレンジをプロデュースしている。

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