日本理化学工業はなぜ知的障害者を雇うのか 幸せを提供できるのは福祉施設ではなく企業
わが社では、「周囲に迷惑を掛けたら、就業時間中でも家に帰します」と約束しているのですが、ある男性はちょっと気に入らないことがあると暴れ出すため、就職から2年間で30回以上も家に帰されました。
親御さんには「本人の口から『もうしません』という言葉が出たら、翌日からまた会社に来ていいですよ」と伝えてあるので、しばらくすると彼も再び会社に来るのですが、結局はまた暴れてしまう。
それでも、最初は週に1度だったのが、やがて2週間に1度になり、1カ月に1度になって、間隔はどんどん伸びていく。私は彼が確実に成長していると感じました。そして今では、彼はまったく問題行動を起こさなくなり、それどころか後輩社員の面倒を見てあげるまでになったのです。
女性にとっては子育ても立派な“仕事”
彼が成長できたのは、やはり「働く幸せ」を求めていたからでしょう。家に独りぼっちでいると、「会社に行って役に立ちたい」「皆から褒められたい」といった欲求が涌き上がってくる。ある脳神経外科の教授は、その理由を「人間は“共感脳”を持っているからだ」と教えてくれました。
人間は一人では生きられない動物であり、群れの中で周囲に支えられて、初めて生きられる。そして支えてもらうためには、自分も周囲の役に立つことが必要になる。つまり人間は、「人の役に立つこと=自分の幸せ」と感じる脳を持っているのだというのです。この話を聞いて、私はあの住職の言葉はやはり正しかったのだと、改めて実感しました。
もし皆さんが、仕事をしていても幸せを感じられないのなら、自分が働くことでどのように人の役に立てているのか、今一度見直してみてください。時には会社や上司に不満を抱くこともあると思いますが、仕事を通して誰かの役に立つことそのものが、自分自身の幸せにつながっているはずです。
ただ、女性が社会に出て働くことについては、少し違った思いもあります。
今年83歳になる私が、あえて本音を申し上げるなら、女性にとっては「子育ての役割」や「家族の生活を支える役割」を果たすことも立派な“仕事”であり、人の役に立つことなのだと思うのです。特に子育ては、日本という国を支える大事な国民を育てる仕事ですから、社会全体のために役立つ仕事でもあるわけです。
もちろん会社で働くことは意義のあることですし、世の中もそれを求めています。経済的な事情から、共働きを余儀なくされている人が多いことも分かります。ですが、「仕事と家庭は両立しなければならない」という思いが、どうも先行しすぎているように思うのです。
だからこそ若い女性たちには、子育てが大事な仕事であることをしっかり認識したうえで、将来をじっくり考えてもらいたい。どんな結論が出るにせよ、「自分はどんな形で人の役に立ちたいのか」を考えることが、きっとその方の人生を幸せへと導いてくれるはずです。
(取材・文:塚田有香/撮影:竹井俊晴)
Woman typeの関連記事
結婚・出産後に働き続けたい人も要注意! “隠れ専業主婦志向”チェックリスト
生活が保障されたとしても「働き続ける」人が多数! 働く女性が仕事に感じる「お金を稼ぐ」以上の価値とは
どんな企業も欲しがる!? 今、市場価値の高い女性に共通するたった1つの条件
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら