「パラサイト・シングル中高年化」の先に待つ難題 「希望格差」問題を放置してきた日本社会の代償
近年日本社会において、独身者の社会問題化の方向は2つある。1つは、「70-40問題」「80-50問題」また「中年ひきこもり」、さらには「子ども部屋おじさん、おばさん」というネーミングまで現れるように、親と同居する中年独身者に焦点を当てたものである。
もう1つは、孤立や貧困という視点から「ひとり暮らし」もしくは「ひとり親」の独身者に焦点を当てるものである。
「70-40問題」とは、70歳前後の親と40歳前後代の独身の子が同居している状況を表した言葉である。「80-50問題」は、「70-40」の10年後、つまり、80歳前後の親と50歳前後の子が同居している状況である。親子の年齢差が平均約30歳なので、このような言い方が一般化した。
先に述べたように、2019年内閣府によって、40-69歳の中高年ひきこもりの人数が61万3000人と推計する調査が公表され、話題になったこともある(中高年ひきこもりと中高年親同居独身者はイコールではないことには留意する必要がある)。
問題が表面化しない深刻な理由
親同居の中年独身者すべてが、今問題を抱えているというわけではない。むしろ、親子共々経済生活上、心理的にも満足しているケースが多いだろう。親が70代、80代くらいであれば、まだ健康であることが多いし、経済的にも資産を形成し、十分な年金に恵まれている世代である。中年の子どもは、部屋を占拠したまま、家賃を払わなくてもよいし母親に食事を作ってもらえている可能性が高いだろう。
親のほうも、子どもが多少なりとも働いている場合、いくばくかのお金を入れてもらえれば家計の足しになる。要支援、要介護の親が1人いても、子どもは介護、支援要員として、賃金を払わずに使うことができる。心理的にも、日本は親子関係が密なので、寂しくはない状態にあるだろう。
もちろん、中高年の独身者とその親の生活状況は多様である。何と言っても、最初に見たとおり、2015年時点で中年親同居未婚者(35-44歳)は、300万人いるのである。子どもが無職、そして、ひきこもりの場合、心理的コミュニケーションの困難もあるかもしれないが、経済生活では完結していることが多い。
というより、完結しているから、親同居が維持されているともいえる(完結しているとは、外からの援助の必要なく生活しているという意味である)。そして、完結しているからこそ、喫緊の課題とはならないのである。
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