「パラサイト・シングル中高年化」の先に待つ難題 「希望格差」問題を放置してきた日本社会の代償
問題は、将来、特に親の介護状況が深刻化したり、親が亡くなった後の経済的困窮、心理的孤立したりすることが、今後の社会問題として浮上することだ。20年後には、現在の70代、80代の親世代はほぼ亡くなり、独身の高齢となった60代、70代の子どもが残されるわけである。
親の年金は引き継げないし、親が建てた家、買ったマンションも老朽化が進んでいるだろう。自分の年金が十分ある正規雇用者であった独身者なら大丈夫だが、収入が少なかったり、ひきこもりであったりする独身者は、経済的に自立することが困難な状況に直面するはずである。
現在であっても、家族がいない高齢者をどのように処遇するか、問題になっている。そのような高齢者が大量、何百万人レベルとなる20年後、どのような状況になるのか、誰もわからない。なぜなら、世界的に前例がないからである。
ひとり暮らし独身者と孤立予備軍
もう1つの独身者の社会問題化の方向は、主に単身者に焦点を当て、その脆弱な経済基盤と社会的孤立を問題視するものである。
戦前には「単身者」が問題とされたし、近年は「ひとり親女性」の貧困状態が問題にされた。ただ、戦前は都会に出てきたひとり暮らしの若者、ひとり親の問題化に関しては、主に未成年の子どもを育てている母親に関しての問題化であって、多くの子どもが成人に達している50代が注目される事は少なかった。
しかし、近年は、中年独身者が増えるにつれ、ひとり暮らし独身者の孤立が問題となっている。私が行った50代独身者調査(未婚、離死別、親同居、ひとり暮らしなどを含む)でも独居の中年独身者の孤立が際立っている。特に、女性より男性の孤立度は深い。「普段のできごとをよく話す相手」として、男性未婚でひとり暮らしの人は半数以上がいないと答えている。
石田光規・早稲田大学教授の調査でも、男性単身者の多くは、普段外に出ず、テレビばかりみているという結果になっている(石田光規『孤立の社会学』 2011年)。そして、親と同居している独身者の多くが、話し相手として両親を挙げている。では、両親が亡くなった後、孤立に陥らないという保証はない。
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