「パラサイト・シングル中高年化」の先に待つ難題 「希望格差」問題を放置してきた日本社会の代償

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大量の親同居中年独身者が、生活上、心理的に困難な状況に直面していることを述べてきたが、経済的に生活できる人であっても、また、現在、親と同居している独身者であっても、将来の「孤立」の問題に直面する。

NHKスペシャルで「無縁社会」が放送されたのが2010年であった。無縁死3万2000人の衝撃という副題がついた番組は話題を呼び、その年の流行語大賞も受賞している。

無縁死、孤独死などと呼ばれるが、定義はさまざまで、病院で亡くなっても遺体の引き取り手がいないというケースから、たとえ家族が他の場所に住んでいても、誰にも知られずに自宅で亡くなるというケースまで含まれる。亡くなる時にそばに誰もいない、もしくは、亡くなった後死者の「世話」をする人がいないことである。

当時の年間死亡数は約120万人、うち3万2000人は、約3%弱にあたる。これは、1930年生まれの人(2010年当時は80歳)の生涯未婚率(男性2.6%、女性4.4%)に相当する。生涯未婚が孤立死に即直結するわけではない。この世代は、きょうだいが平均4人いるので、本人が未婚でも甥や姪がいるケースが多い。ただ、甥や姪に頼ることができにくくなっている社会になったことは確かだ。

一方、結婚した人であっても、離別したり、子どもがいても仲が悪かったりするために孤立死に陥る可能性もある。その影響がオフセットされた数字かもしれない。その率を単純に近年の生涯未婚率(約25%)に当てはめると、2050年ごろには、孤立死が年間40万人に達する計算になる。

家族がいないことを前提とした仕組みを

それゆえ、将来孤独死するかもしれないという不安を持つ独身者が増えていくことは確実である。戦後日本社会は、すべての人に家族が存在している(子どもの時は両親、成人期は配偶者、高齢期は子)ことを前提に組み立てられていた。

それゆえ、独身者は一時的な若者問題、もしくは例外として扱われてきたので、家族がいなくて孤立する中高年を制度的に扱う枠組みが存在していない。しかし、ここまで孤独死が増える見込みだと、家族がいないことを前提とした仕組みを考えなくてはならない時期に来ている。

2021年、日本政府もイギリスに倣って内閣府に「孤独・孤立対策担当室、担当大臣」を作ったが、どのような対策が打たれていくのか、まだ明確ではない。少なくとも、家族から孤立した人をどのように処遇するかが、今後の日本の大きな社会問題になっていくことは間違いない。

(構成:中島はるな)

山田 昌弘 中央大学 文学部 教授

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やまだ・まさひろ / Masahiro Yamada

1981年、東京大学文学部卒業。1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学。

親子・夫婦・恋人などの人間関係を社会学的に読み解く試みを行っている。学卒後も両親宅に同居し独身生活を続ける若者を「パラサイト・シングル」と呼び、「格差社会」という言葉を世に浸透させたことでも知られる。また、「婚活」という言葉を世に出し、婚活ブームの火付け役ともなった。『結婚不要社会』、『新型格差社会』、『パラサイト難婚社会』など著書多数。

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