日米両首脳が突如言及した「エタノール」って何? CO2の排出抑制に効果的、日本政府も普及に本腰

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現在、世界ではE10の使用がスタンダードと言える。バイオエタノール生産で最大のアメリカでは、95%がE10のガソリンを使用している。今後全州でE15の普及を進める方針であり、一部の州ではE85、混合率85%のエタノール混合ガソリンも販売されている。

もう一方の生産大国であるブラジルではE100、100%エタノール燃料も流通している。ほかにもルーマニアやフィンランド、フランス、中国などでも普及率が高い。モータースポーツでも、F1やインディ500といった世界的なレースで、レースカーの燃料としても使われているほどだ。

E10が世界のスタンダード

日本のガソリンも、輸入されたバイオエタノールが混合されている。バイオエタノールと石油系ガスであるイソブテンと合成することで得られるETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)がそれだ。

ETBEは9割以上がアメリカ産とブラジル産のエタノールからアメリカで変換されて輸入されている。残りの数%がブラジル産エタノールを輸入して、国内でETBEに変換されている。

ただ、ETBEを上記のような混合率で換算すると「E1.85」で、E10と比べてもCO2排出削減効果ははるかに小さい。

日本は2002年12月に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」で、バイオエタノールを含むバイオエネルギーに関する技術開発や普及促進が掲げられた。

さらに2010年度には原油換算50万キロリットルのバイオ燃料(ETBE)の導入が決定され、2011年度に21万キロリットルを輸入して以降、2017年度に50万キロリットルの輸入を達成して以降、年間50万キロリットルが輸入されている。2023年度のガソリン消費使用量は約4300万キロリットル(国土交通省「自動車燃料消費量調査」)だ。

現在、日本では石油販売などを行う中川物産(名古屋市)が国内で唯一、自社が持つガソリンスタンドでE3とE7の販売を行っている。

今後、バイオエタノールの輸入拡大と普及においては日本側も自動車メーカーや石油元売りに速やかな対策が求められる。またバイオエタノールは「持続可能な航空燃料」(SAF)の有力な原料ともされているのも注目すべき点だ。

普及においては、バイオエタノール混合ガソリンはレギュラーガソリンよりも価格が安いことも魅力だ。2023年度下期のエタノール価格を前提にすると、E10ガソリンはレギュラーガソリンよりも1リットル当たり4.5円安いという試算がある。

一方で、バイオ燃料を日本でつくろうとすればコストが高く、商業ベースに乗りにくいというデメリットもある。

「なぜバイオエタノール混合燃料を使うべきなのか」という消費者への理解促進とともに、エネルギー自給という問題も含めて何が最適解かを、今後日本でも議論を深めていくべきだろう。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(以上、東洋経済新報社)など。

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