日米両首脳が突如言及した「エタノール」って何? CO2の排出抑制に効果的、日本政府も普及に本腰

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2024年11月11日、経済産業省は「自動車用燃料(ガソリン)へのバイオエタノールの導入拡大について」を発表し、新たにバイオエタノールの導入という政策目標を発表した。

具体的には、①2030年度までに最大濃度10%の低炭素ガソリンの供給を開始する、②2030年代早期に、最大濃度20%の低炭素ガソリン対応車の新車販売比率を100%にする、③2040年度から、最大濃度20%の低炭素ガソリンの供給開始を追求する、というのものだ。

「最大濃度10%」とは、ガソリンに10%分のバイオエタノールが混ぜられているという意味で「E10」と示される。最大濃度20%の場合は「E20」となる。

混合率が高くなればなるほどガソリンの使用量が減るため、そのぶんCO2削減効果が高まる。今後、自動車メーカーはバイオエタノール対応の車の販売強化、石油元売りはバイオエタノールなど混合技術の発展を目指すようになるだろう。

日本政府が本格導入に本腰

これは、カーボンニュートラル燃料の使用を拡大させ、CO2排出量をできるだけ速やかに減らすというのが最大の目標だ。日本は「パリ議定書」に基づき、2030年度までに、2013年と比べて46%のCO2を削減し、さらに2050年度にはカーボンニュートラル、すなわち温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする目標を掲げてきた。

日本のCO2排出量は産業部門からが最も多いが、次に多いのが運輸部門だ。その運輸部門において、自家用自動車の排出量は45%を占めている。

アメリカ・イリノイ州のトウモロコシ農場。アメリカでは豊富に採れるトウモロコシがエタノール生産を後押ししている(写真・編集部)

バイオエタノールの混合を増やしたガソリンにすると、どれくらいの環境的効果があるのか。仮に日本国内の自動車をすべてE10を使用した場合、年間数百万トンものCO2削減効果が見込まれる、とされている。

これは「LCA」(ライフサイクルアセスメント)に沿って評価されたものだ。すなわち、油井から車両が走行するまでの燃料の炭素収支を公平に評価した場合に、どれだけの効果があるかがわかるようになっている。

LCAの評価などに詳しいアメリカ・イリノイ州立大学シカゴ校のステフェン・ミューラー教授は、レギュラーガソリンの排出量は88.7gCO2/MJと算出できると紹介する。「gCO2/MJ」とは、「グラムCO2・パー・メガジュール」と読む。

一方で、バイオエタノールをガソリンの代わりに使用する場合には、置き換わった部分について半分以下の削減効果が見込まれると説明する。ミューラー教授は「バイオエタノールを使用するほうが、当面はCO2排出量削減には最も効果的だ」と述べた。

仮にEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)が普及したとしても、前出のLCAで評価すれば、発電元が何であるかで、必ずしもバイオ燃料より有利にならないこともあるという。

現在EVの普及が足踏みしている状況で、地球温暖化対策は待ったなしの状況にある。そのような中、CO2削減にはバイオエタノールなどバイオ燃料の使用拡大が最も現実的ではないだろうか。

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