患者の担当看護師さんは通常2人一組だったが、まれに3人一組の時や研修の看護学生がカルガモの赤ちゃんのように付いて回るケースもあり、なかなか微笑ましかった。その仕事ぶりにはほとほと感心させられた。朝6時過ぎの検温、血圧測定から消灯後の見回り、ウロガード(集尿袋)のチェックと尿の廃棄まで、毎日本当に献身的に働いている。
泌尿器科の病棟の入院患者は65歳以上の高齢者が圧倒的に多い。入院当時64歳だった筆者は、病室で最年少というケースがほとんどだった。身体ふきから排尿や下半身周辺のケアまで、高齢患者への対応を見ていると看護というより介護といったほうがふさわしく思えた。
あるとき、筆者の隣のベッドに手術を終えた70代の患者が運ばれてきた。この患者、最初のうちは静かにしていたのだが、やがて事あるごとにナースコールを押して看護師さんを呼びつけるようになった。30分に1回、20分に1回、そして10分に1回と頻度が増していった。
「どうされましたか」と尋ねる看護師さんにこの患者は「漏らしちゃったみたい」とつぶやく。下半身の様子をチェックした看護師さんは「大丈夫ですよ。漏れていませんから」。
迷惑患者に悩まされることも
このやり取りが10分おきに3回ほど続いた。いずれも何事もなかった。お漏らしの次は「管がずれている」。これも「大丈夫ですよ」。何でもないのに、不安だからなのか、人寂しいのか、すぐにナースコールで呼びつけてしまうのだ。消灯後も状況は変わらず、一連のやり取りでこちらも眠れないし、イライラしてくる。
ある時、耐え兼ねてつい「何度繰り返すんですか」と声に出してしまった。翌日、隣の患者はナースセンターの目の前の病室に移動していった。こんな患者に当たったら、看護師さんも精神的に参ってしまうだろう。大変な職業である。
入院生活の楽しみである食事は全般的に充実していた。朝のパン食はおかゆに変更し、昼食、夕食は普通のご飯にしてもらった。以前も触れたが、1食当たりの自己負担額は490円(住民税非課税の世帯は230円)である。この物価高騰時代にワンコインで食べられるのだからありがたい。
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