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45歳、活発だった彼女が「安楽死」を選んだ理由 死から逃れるのではなく、引き寄せようとした

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わたしに彼らの死を助けたという疑いがかかれば刑事責任を問われるから、自分の気持ちを伝えることができなかったのだ。どの患者も、わたしに最善の治療を提供してほしいと願っている。

医療介助死(MAiD:Medical Assistance in Dying)は、ほとんどの患者にとって最後の手段であり、実際にそれを求める人はごくわずかだということをわたしは知っている。だが、それが合法となったからには、望む人には提供してあげたいと思った。

患者の「最期」に寄り添うためには

長年、わたしは医療が専門ごとに細分化されていくのを見てきた。各種の専門クリニック、腫瘍専門医、がん病棟、緩和ケア……患者がそうした専門家を求める気持ちは理解できるが、専門的医療の現場では、医師の関心は患者にではなく症状に向けられがちだ。

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一方、ホームドクターであるわたしは、患者のことを知りつくしているのに、患者に死が近づいてくると、それまでどおりの治療を提供できなくなる。何十年もつきあっている高齢の患者が、介護施設に入ってしまい、わたしのクリニックに来られなくなるというケースは珍しくなかった。

いまの医療体制のもとでは、患者が何度か救急外来を受診したり入院したりすると、その患者はホームドクターから長期療養施設に引きわたされる。

転倒した、錯乱して周囲をあわてさせた、心臓が衰弱した、息切れがひどくなったといった出来事によって、患者はホームドクターの手を離れ、総合病院や緊急治療室の医師との結びつきを強めていく。

したがって、ホームドクターであるわたしが最期まで患者に寄り添うためには、終末期ケアの全体を学び、その中で医療介助死(MAiD:Medical Assistance in Dying)を提供する準備をしなくてはならなかった。

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