45歳、活発だった彼女が「安楽死」を選んだ理由 死から逃れるのではなく、引き寄せようとした

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(写真: ks__1984 /PIXTA)
高齢化が進むなかで「安楽死」が頻繁に話題にあがるようになりました。2016年に安楽死を合法化したカナダでは、細かく法改正をしながら現在総死亡者数の3%前後の人が安楽死を選択しているそうです。
「死」を自分で選ぶ時代になった今、安楽死を選ぶ人はどんな思いで選択し、見送る家族や医師はどう受け止めているのか。法律の解釈はどう変遷していったのか――。『安楽死の医師』より一部を抜粋・編集してお届けします。

「死の介助」がもたらすいい効果

この日、2018年7月31日、わたしが死の介助(MAiD:Medical Assistance in Dying)を行うようになってから、ほぼ1年半経っていた。その間、この仕事がもたらすいい効果を何度も実感した。

最終的な同意を表明する患者が見せる安堵の表情。

愛する人が自らの意思で逝くのを見守る家族や友人たちから伝わってくる、深い悲しみとその中にある静かな喜び。

残された家族がわたしを抱きしめ、隣に座り、わかちあってくれる故人の思い出。

わたしが泣くのはそんなときだ。ほとんど毎回、わたしは泣いた。

はじめてヨランダに会ったのは2017年11月のことだ。彼女は死を固く決意していた。45歳という若さだったが、きわめて稀な肺疾患を30年間も患っていた。それでも彼女は人生を謳歌した。

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