「不正トラベル」がインバウンド宿泊の裏に潜む 旅行システム会社「tripla」幹部が明かす被害実態
巧妙なのは予約・決済のタイミングにある。予約を直前に入れてくるため、カード会社側がカードの不正利用に気づいて宿泊施設などに通知したときは、すでにチェックアウトしてしまっていることが多い。
不正トラベルは組織的にビジネス化されており、暗躍しているのが「不正トラベルエージェンシー」だ。クレジットカードを不正利用して取った宿泊予約を転売して稼いでいる。業界関係者によれば、不正トラベルを利用する宿泊者は「圧倒的に中国をはじめとした中華系が多い」という。
不正トラベルの被害に遭った場合、カード会社に対し不正利用の証明作業が必要となる。トリプラでは宿泊施設に宿泊者情報を提供してもらい、不正利用されたカードを発行しているクレジットカード会社に加盟店管理会社を通じてデータを提出する。
金銭的な被害に加え人手も奪われる
大部分は不正利用の証明が成立するものの、そうではない場合もある。証明できないとき、トリプラは宿泊代金を立て替えてくれているカード会社に代金を払う。つまり、不正トラベルエージェンシーや不正トラベルの宿泊者に代わって、トリプラが宿泊代金を負担するわけだ。
不正利用の証明作業自体も痛手となる。不正トラベルをした宿泊者の特定やパスポートといった資料の準備などに手間がかかるため、人員を割く必要がある。「最も不正利用が多かった2024年の夏は、1〜2人の社員が証明作業だけで1カ月の業務が終わってしまうくらいだった」と奥林氏は振り返る。
しかし、こうした不正トラベルの被害は2024年8月ごろから減少。足元では被害負担額がほぼゼロという状況が続いている。契機となったのは、不正検知対策を導入したことだ。
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