医師不足に拍車をかける「偽りの働き方改革」 "自己研鑽""宿日直"で働かせ放題という現実

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2018年11月、都内大学病院の緩和医療科に勤務していた40歳の男性医師が、くも膜下出血を起こし寝たきり状態となった。

電子カルテなどによれば、月2〜5回の平日夜勤の宿直を含めると、発症前6カ月の時間外労働は月200時間をほぼ超えていた。

「宿日直」も抜け道に

ところが、三田労働基準監督署は労災申請を却下した。宿直時間のうち一律に6時間を仮眠時間として労働時間から差し引いたためだ。さらに不服申し立てによる審査請求では、宿直中の労働時間は「ゼロ」と判断した。電子カルテからは、深夜を含め診療を行っていたことが明らかであるにもかかわらずだ。

こうした判断を支えているのが、病院の「宿日直許可」制度だ。労基署長から許可を受ければ、宿直勤務が労働時間規制から除外されるという特例がある。ほとんど実働がない、いわゆる「寝当直」を想定した制度のはずだが、ほぼ一晩中、診療しているようなケースでも、労働時間と見なさない運用がまかり通っている。

さらにこの宿日直許可での宿直時間は、働き方改革で導入された「勤務間インターバル」にカウントできる。病院からすれば、夜間から翌日夕方までの長時間労働を可能にしてくれる仕組みだ。

医師の働き方改革への対応に四苦八苦していた病院経営者たちはこの「抜け道」に飛びついた。宿日直許可の件数は2020年の144件から、2023年には5173件まで跳ね上がっている。

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