世界が震撼「DeepSeek」創業者による問題提起 中国の現状への率直な意見、現地でも話題に
梁CEOによると、エンジニアの多くは新卒か、社会に出て1~2年の「第二新卒」で採用した。同社の求人では日給500~1000元の条件で学生インターンも募集している。
実績のないスタートアップであるDeepSeekは現実的に実務経験のない若手を採用するしかないのだろうが、梁CEOはインタビューで「短期的には経験者を雇うのが正解だが、長期的にみれば基礎能力、創造性や愛のほうが大事だ」「経験豊富な人は、深く考えることなく『こうやるべきだ』となりがち。経験のない人のほうが、模索を繰り返し本質的なやり方にたどり着く」と持論を述べている。
強がりもあるのかもしれないが、金融の素人でクオンツファンド「幻方量化」を設立し、成長させた成功体験から「素人集団がつくりあげたビジネスモデルのほうが模倣されにくい」という信念も見える。
今の中国は能力と経済力があれば留学して箔をつけるのが成功ルートになっており、製品やサービスが成功すれば、あっという間に模倣と価格競争が始まる。ただ、全体で見ればそこから取り残されている人のほうが圧倒的に多い。
中国の人材を一から育て、「真似せず真似されない」独自の価値をつくりあげるという梁CEOの考え方が、中国で広く共感を呼ぶのは想像にかたくない。
「中国はイノベーションが弱い」発言も
⑤率直な中国の現状批判
DeepSeekとは何ぞや、生成AIや半導体におけるアメリカの優位性を奪うのか、中国の技術はリスクがあるのではないか……この数日の報道のほとんどがアメリカ側の視点に立っている。ChatGPTの登場時と同様、日本メディアは海外の報道を引用して伝えるか、サービスを使ってみて紹介するくらいしかできていない。
中国は大型連休中なので、DeepSeekはもちろんのこと、テック業界の大物の反応なども少ない。にもかかわらず、引くくらい盛り上がっている。
中国でこれほど話題になっているのは、自国の企業というのが一番の理由だろうが、中国経済が停滞し、混迷が深まる時代において、「中国はイノベーションが弱い」「人のふんどしで相撲を取ってきた」という梁CEOの直言が、中国人に刺さりまくっているというのも大きい。
梁CEOはインタビューで、「機会に乗じてお金を稼ぐことは考えていない。エコシステムの発展を牽引する存在になり、グローバルでのイノベーションの潮流に参画したい」と答えている。
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