世界が震撼「DeepSeek」創業者による問題提起 中国の現状への率直な意見、現地でも話題に

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改革開放で経済が急成長した広東省で生まれ育った同CEOは、「この30年、中国企業の多くはお金を稼ぐことに執着し、イノベーションを軽視してきた。ビジネスのロジックに縛られたらイノベーションは難しい」「中国企業の多くは、イノベーターじゃなくて追随者であることに慣れてしまった」「中国企業の多くは他人のイノベーションに乗っかって製品化、マネタイズすることが習慣化している」と中国企業の課題をこれでもかというほど並べ、自らの「他社と競争しない」姿勢を強調する。

「中国はオリジナルをつくる力が弱い」ことは、巷では広く共有されているが、中国のリーダー層がこういった「自省」を発することはあまりない。

EVが盛り上がったらEV、生成AIが盛り上がったらAIに参入し、資金力やマーケティングで圧倒しようとするメガテックや大物経営者も、耳が痛いはずだ。

デフレの中国で異彩放つ経営者

梁CEOが指摘しているように、中国企業の成長は2020年ごろまで、「時代の追い風」にも支えられた。

デフレに突入し、人口ボーナスも消失しつつある今、従来のやり方では通用しないという危機感は強い。

中国メガテックは生成AI技術に懸命に投資しているが、そのリーダーはしばしば「ChatGPTとどのくらい差があるのか」と質問を受ける。聞かれた側は「以前は2年の差があったが3カ月の差に縮まっている」などと答える。確かに中国の技術力の進展は目覚ましいが、生成AIに限らず、アメリカのイノベーション企業がベンチマークになっている領域は少なくない。

「中国AIがこの先ずっと『アメリカを追う立場』でいいのだろうか」と問題提起してきた梁CEOは、高性能チップと巨額の資金、そしてトップ人材の集積が不可欠とされる領域で、「攪乱者」として注目を集めることにひとまず成功した。

もちろん、中国企業であるDeepSeekがアメリカを攪乱することは、大きなリスクを抱え込むのと同じだ。技術の詳細も不明な点が多い。2010年代まで自由に発言し、政府や国のシステムも堂々と批判してきたジャック・マー氏が表舞台から姿を消したように、名前が売れる副作用も確実にあるだろう。

同社が業界の秩序を破壊する存在になるのか、あるいは攪乱するだけで終わるのか、現時点ではわからない。

それでもDeepSeekを率いる梁CEOの発言は、日本人や日本企業にとっても気づきが多いのではないだろうか。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
X: https://twitter.com/sanadi37
公式サイト: https://uragami-sanae.jimdosite.com/
 

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