「旭酒造→獺祭」社名変更で一体何が変わるのか 意欲的な海外戦略の成功の要因となるか?

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また、日本や地元とつよいつながりがある社名を変更する場合は、地元や社員からの大きな反発も考えられる。

・コスト負担

また、ささいなことだが、社名変更には多額のコストが伴う。名刺のロゴ変更だって、全社員分を考えると費用は多大になる。くわえて、ウェブサイト、ロゴや看板から、グッズ、書類にいたる。もちろん広告宣伝費も必要になるだろう。

社名変更の成功例はたくさんある

ただ、これまで社名を変更して飛躍した日本企業は多々ある。

1949年、山口県宇部市で創業された紳士服店「小郡商事」がそのままだったら、おそらく世界制覇はありえなかっただろう。ご存じの通り、同社は現在の「ファーストリテイリング」=ユニクロ、GUをもつ世界的ブランド企業だ。

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いまさらだが、「FAST」と「RETAILING」だ。素早く、優れた衣類を提供する、という、この意味のある社名に変更したのは、同社の理念を反映しており、世界進出のきっかけをつくった。パナソニック、ソニー、東芝、ベネッセ、シャープ、などさまざまな日本を代表する企業が社名を変更している。

これらの成功は、おそらく複合的な要因が絡み合っているだろう。

最後に、私は「DASSAI」を確認してみたい。英語圏で奇妙な、あるいはセクシャルな単語と響きが似ていないか。また歴史的に言及しにくい単語と似ていないか。たとえば、日本人は認識していないが、「88」は日本人からすると「パチパチ=拍手」の意味で使う。しかし、国際的にはハイル・ヒトラーを差す。同様に、「18」もダメで、アドルフ・ヒトラーを指す。

DASSAIは、半ば冗談だが、「だっさいなあ」と語呂は似ている。ただ、それ以外、他の言語でも危ない単語と似ていることはない。むしろ、読者でご存じだったらおしえてほしい。少なくとも私の段階ではリスクはないと判断した。

あとは獺祭の美味に外国人が“酔いしれて”くれるかだ。私は個人的に獺祭のファンで、DASSAIの国際化は心から応援したいと思う。あとは世界中にコールドチェーンを張り巡らせ、適正な温度で日本酒を伝播できるかが問われるだろう。獺祭が目指す1000億円を実現するためには、品質をいかに維持するかが重要だ、またそれがブランドの成否を分ける。

獺祭は味だけではなく、世界中の品質も確保することができるか。物流面でも「革新」を起こすことができるかが重要だろう。

DASSAI、そして日本酒は、まだワインやウイスキーに比べると弱い。ただポテンシャルはじゅうぶんだ。日本の文化を背景に世界中で高評価を得られるか。日本酒は特定の市場に限定されがちだが、DASSAIはこれを打破してほしい。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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