「脳死は否定するのに移植を望む」はおかしい? 医学的な事実を理解していれば無用な迷いは消える

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心臓移植では、生きた人から心臓を取り出すと、殺人になるから取り出せない。死んだ人から取り出すと、移植しても心臓が動かない。だから、死んだ人から生きた心臓を取り出すことが必要になる。だれが考えても無理なこの注文を実現するために、考え出されたのが、脳死である。

脳死は突然に起こる

患者さんが脳死かどうかを決めるのには、次の6項目の脳死判定を行う必要がある。

・深昏睡

・自発呼吸の消失

・平坦脳波

・瞳孔の固定と散大

・脳幹反射の消失

・以上の検査を6時間以上経過してから繰り返す(6歳未満は24時間以上)

脳死はほとんどが突然に起こる。くも膜下出血や脳内出血、交通事故、転落、殴打などによる頭部外傷、溺水、自殺未遂などが原因だからだ。しばらく前から脳死になりそうだとわかっていれば、心の準備もできるが、その余裕はたいていない。

脳死になった患者さんは、身体は温かいし、心臓は動いているし、人工呼吸器が取りつけられているが、呼吸のたびに胸が上下する。汗をかいている場合もあるし、鳥肌が立つこともある。手を握ればやわらかく、ぬくもりも感じられる。

そんな状態の患者さんを、もう死んでいると思えるだろうか。あまつさえ、臓器を取り出すときには、全身麻酔をかけるのだ。死んでいる人間になぜ麻酔が必要なのか。

さらには、「ラザロ徴候」と言って、無呼吸テストのときに、苦しげに両手を持ち上げることもある(ラザロは聖書にあるキリストの奇跡で、死後3日目によみがえった青年の名前)。

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