物価上昇きついのに「デフレ脱却宣言」出ない理由 2001年に政府が発表してからいまだ脱却できず

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その理由について「政府の景気判断は遅れがち」だと単に批判すべきことでもないでしょう。政府が「デフレ克服」のための政策の必要性を強く認識するには、デフレの恒常化を確認するまで、ラグはどうしても発生してしまうからです。

「生鮮食品を除いた」消費者物価に注目する理由

さて、ここであらためて足元の物価高について考えてみましょう。冒頭で挙げたスーパーの例ですが、野菜に関しては農林水産省が毎月「野菜の生育状況及び価格見通し」をウェブサイトで公表しています。直近(先月25日公表)の情報では、キャベツについて「8月から9月の高温、10月の天候不順の影響…(中略)…12月の低温、干ばつの影響」が挙げられており、目先で価格が下がる見通しは立ちにくい状況です。

一方、カレールウの場合は油脂や小麦などの原材料価格や物流費の上昇が主な値上げ要因で、天候不順による野菜の値上がりとは異なる理由です。天候不順を一時的要因とみなすかどうかについては意見が分かれますが、物価を評価するうえでは、持続的な傾向を捉える必要があります。

私たちが買うモノやサービスの値段の動きの全体を見るのに消費者物価がよく使われます。特に「生鮮食品を除いた」指数が注目されます。これは、雨量や日照量で収穫が大きく影響される野菜などは値段の変動が大きいことから、生鮮食品を含めて物価の動きを見てしまうと、物価が“持続的”に上昇しているかの判断がわかりにくくなるからです。政府もデフレの判断で最も注目する指標は消費者物価(生鮮食品を除く総合)です。

その消費者物価(生鮮食品を除く総合)ですが、足元は2022年4月から2024年11月まで32カ月連続で“緩やかな物価上昇”の目処とされる前年比2%を上回ってきました。このような流れもあり政府は直近の年次経済財政報告で「現在、わが国は明らかにデフレの状況にはない」と示しています。

であれば、なぜ政府はデフレ脱却の宣言をしないのでしょうか。それは政府が定義するデフレ脱却は「デフレでないこと」だけでなく「再びデフレに戻る見込みがないこと」も必要だからです。

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