「選挙の推し活化」と希望格差社会の因果関係 「希望なき社会」の選挙で何が求められるのか

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また、イデオロギーなき時代を反映して、イデオロギーで投票するということも現実味を失いつつある。革命的志向や伝統回帰のように過激な主張をする政党もないわけではないが、多くの候補者や主要政党の「目指すべき将来の社会像」は、現行の社会の延長上にある。

そして、国民の大多数も、現在の社会制度や外交はおろか、政策の大きな変革は求めていない。だから候補者や政党は、「今とは違った社会をめざす」とは言えずに、現行政策の微修正に終始する。

選挙は「好き嫌い」共有の絶好の場

続いて、プル要因も挙げておこう。人は、自分の「好き嫌い」の感覚を肯定してほしいという欲望が存在する。その方法として、オタクやマニアと呼ばれていたものが、「推し」という言葉に現在収斂しつつあるように見える。

そして、SNSの発達によって、好き嫌いの感覚がどれだけなのか、どれだけ自分と同じ感覚の人がいるのか「目に見える形」になっている。そして、概して推しの人は、自分の仲間が増えることを喜ぶ。そのために、「推し」を応援するだけではなく、一緒に推してくれる人を増やそうとする。

それを思うと、政治における選挙は、推し活にとって絶好の場であることがわかる。自分と同じ候補者、政党が好きな人がどれくらいいるのか、応援したら、どれだけ仲間が増えるのか、目に見えてわかる。推しが当選しようが落選しようが、自分の仲間が多くいることに満足を感じる。そのような感覚で、候補者や政党を応援する人が増えているのではないか。

推しの問題点は、推しは冷めることがあることである。推しのキャラクターに対して、少しでも違和感があると「冷めてしまう」。統一したキャラクターを作り上げているアイドルやキャラクターであれば、そのようなことは少ないが、政治家や政党であると、冷めるのも早いだろう。

今年も東京都議選や参議院選挙が予定されている。無党派層を引き付けるために、今後は、政治家や政党は「魅力」をつけ、キャラクター管理をして、「推し」てもらうことが必要な時代になってきたのかもしれない。

山田 昌弘 中央大学 文学部 教授

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やまだ・まさひろ / Masahiro Yamada

1981年、東京大学文学部卒業。1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学。

親子・夫婦・恋人などの人間関係を社会学的に読み解く試みを行っている。学卒後も両親宅に同居し独身生活を続ける若者を「パラサイト・シングル」と呼び、「格差社会」という言葉を世に浸透させたことでも知られる。また、「婚活」という言葉を世に出し、婚活ブームの火付け役ともなった。『結婚不要社会』、『新型格差社会』、『パラサイト難婚社会』など著書多数。

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