医師も早合点「認知症は悪化していく」は間違い 治せる認知症だってあることを知っておこう
認知症の原因となる脳の障害を起こす病気は70以上もあります。このなかには、治療ができるものが含まれます。そして、治療ができるものでも、医療へのアクセスが遅れると、治療をしても認知症の状態の改善が難しくなるものもあります。
また、1人の人に4大認知症(「アルツハイマー型」「血管性」「レビー小体型」「前頭側頭型」)のいずれかと、治せる病気が原因の認知症が重なっていることはよくあることです。4大認知症のうち2つが重なっていることもあります。
ですから認知症はグラデーションをもっていて、わかりにくいものだと言うのです。わからなさに対して謙虚なまなざしで、いろいろな可能性を考慮する必要がある、と言えます。
症状の変化に気づいた場合も、真っ先に「改善できる可能性」について考えましょう。
医療や介護のプロにも起こる「早合点」から身を守れ
数々の誤解・勘違い、そして早合点は、一般の人たちだけにあることではありません。いまはまだ、認知症の医療や介護に携わる人のなかにも、偏見をもっている人がいます。
それは人がこんなに長生きするようになったのが、この20、30年ほどのことで、認知症についていろいろなことがわかってきたのも最近だからです。認知症の診断や治療について学ぶ機会があまりなかった人も少なくないでしょう。
私が医者になったのは2003年でしたが、その翌年(2004年)12月から「痴呆」という言葉が認知症に改まりました。
とはいえ当時、患者さんに認知症の診断がついていると、病院で診てもらえないことがあるという状況もありました。
なぜならその頃の医療は「患者さんの病気を治し、社会復帰をめざす」もので、老化を診る医療教育は少なく、認知症の人の尊厳を守るといった意識も薄い時代でした。
しかし超高齢社会のいまは、認知症の人は診られないとなったら、患者さんは大きく減ることになります。何科の医師であっても認知症を理解し、対応力をもたざるを得ない時代となり、実際に多くの医師が関わっていますが、認知症について学ぶ機会が少なかった人も含まれるのです。
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