医師も早合点「認知症は悪化していく」は間違い 治せる認知症だってあることを知っておこう

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認知症の診断については、認知症を中心に診療している医師にとっても大変難しいもので、慎重にならざるを得ません。慎重を期しても、現代医学では確定診断はできないのが認知症です。

また、認知症に限らず、高齢者の病気の診断は若い人のそれと比べて難しいものです。なぜなら症状に「複数の持病の影響」「多剤服用の影響」「生活習慣の影響」「運動機能低下の影響」「メンタルヘルスの影響」などが関係することがあり、診断基準どおりに答えを出せないことが多いからです。

高齢者が認知症の状態になることは老化の一部とも考えられ、老化を診る医療はまだ成熟しているとは言えません。

しかし、認知症の診断の難しさはあまり理解されていないのです。そして医師が「もの忘れ=認知症=アルツハイマー型」と考えていたら、誤診も起こります。

日本の「抗認知症薬」処方は他国の5倍

日本は先進国のなかで「抗認知症薬」の処方がとても多くなっていて、その量は他国の5倍にもなっています。もの忘れを相談すると、すぐにアルツハイマー型認知症の診断がつき、抗認知症薬が処方されることがあるためでしょう。他の原因疾患や治療可能な認知機能障害の有無が検討されていないことが往々にしてあります。

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医師だけでなく、医療のコメディカルスタッフ(医師以外の、リハビリ専門職などの医療従事者)、介護現場や地域で働く介護・福祉専門職にも、認知症の人を支えるための知識が不足している場合があります。

認知症の人の数の増加を考えると、比較的に「知識・経験を備えている医療や介護の人材」はまだまだ少ないと感じています。

そこで私たちが認知症の診断や治療に必要な知識を医師らと共有する努力を続けると同時に、ご本人やご家族、地域で支援者となる一般市民のみなさんとも知識を共有する必要を感じていて、この本もその1つのツールとなることを願っています。

認知症の最大のリスク因子は「年をとること」ですから、認知症という状態になることは長生きするほど誰にでも起こる可能性があることと言えます。

とても身近なことだから、みんなが正しく理解をしていたいもの。まず偏見や誤解の是正から、認知症を捉え直していきましょう。

内田 直樹 認知症専門医、医療法人すずらん会たろうクリニック院長、精神科医

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うちだ なおき / Naoki Uchida

医学博士。1978年長崎県南島原市生まれ。2003年琉球大学医学部医学科卒業。2010年より福岡大学医学部精神医学教室講師。福岡大学病院で医局長、外来医長を務めたのち、2015年より現職。福岡市を認知症フレンドリーなまちとする取り組みも行っている。日本老年精神医学会専門医・指導医。日本在宅医療連合学会専門医・指導医。編著に『認知症プライマリケアまるごとガイド』(中央法規)がある。

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