メタの"ファクトチェック廃止"がもたらす変化 誤情報拡散と表現の自由、ネット社会はどこへ向かう?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

仮に今回の発表と同様の動きを欧州で進めれば、メタは厳しい罰則を課される可能性が高いだろう。英国ではオンライン安全法(Online Safety Bill)が成立し、プラットフォームが有害コンテンツを排除しない場合には巨額の罰金が科される。

では日本ではどうなるのか? 現時点で、政府の明確な方針は聞こえてこないが、アメリカの大統領が交代し日米首脳会談を控えるタイミングだけに、明確な意思を示す必要がある。

2024年5月、日本では誹謗中傷などの権利侵害にあたる投稿の削除申請を迅速化・透明化する「情報流通プラットフォーム対処法」が成立し、SNSでの情報発信に対して一定の規制強化が進んだ。

しかし偽情報や誤情報については明示的な規制がなく不十分だ。誹謗中傷以外の有害情報への対処を法的にどう整備すべきなのか議論を進めるときと言える。

日本独自の“仕組み”構築を

信頼できる情報コミュニティを作り上げるのは、ユーザーコミュニティ、ファクトチェック団体、プラットフォーム運営企業、政府機関などが協力し合う総合的な取り組みが欠かせない。

ファクトチェックだけで問題が解決するわけではなく、コミュニティノートのような“機能”だけで問題が取り除かれるわけでもない。単独のテクノロジーや単独の企業の努力、あるいは第三者団体の活動のみで解決できる問題でもない。

メタの方針転換がどのような結果をもたらすのか結論は出ていないが、変化の速度が速いサイバー空間にあって、私たちは今こそ「ソーシャルメディアの公共性」と「民主主義への責任」を問い直す好機に差しかかっているのではないだろうか。

SNSプラットフォームを運営する企業の方針に左右されるのではなく、明確な意思を持って“検閲と自由のはざま”で揺れ動くネット社会の未来を形作る仕組み、法的枠組みの構築を日本政府には期待したい。

本田 雅一 ITジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事