メタの"ファクトチェック廃止"がもたらす変化 誤情報拡散と表現の自由、ネット社会はどこへ向かう?
こうした背景を踏まえると、専門家によるファクトチェックには当然ながら限界がある。単に事実関係を確認するだけでなく、発言のコンテクストや文化的背景、複雑な表現のニュアンスなどを誤解する可能性は拭えない。
それでもファクトチェックを導入していたのは、“他に置き換えられない”重要な役割を担っていたからにほかならない。
ザッカーバーグ氏は第三者のファクトチェッカーは「政治的に偏りすぎている」と批判し、「表現の自由をめぐる我々の原点に戻るときだ」と断じたが、そうであるならば“ファクトチェックに代わる何か”が必要なことは自明だ。
コミュニティノートは有望だが不完全
もっとも“現時点で”、コミュニティノートが理想的に機能するとは思えない。メタの動きが急進すぎて、システムの開発が追いついていないように思える。
メタはトランプ次期大統領の就任基金に100万ドルを寄付し、国際問題担当責任者をリベラル色の強い人物から、保守派の共和党員に交代させた。さらに、トランプ氏と親密な関係にある総合格闘技団体UFCの代表を取締役に迎え入れるなど、保守勢力へと幹部を刷新している。トランプ氏自身も「メタは大きな進歩を遂げた」と発言しており、メタ側が“次期大統領の歓心を買う”ための一環であることがうかがえる。
メタが導入を表明したコミュニティノートは、前述したようにTwitter時代のXが実装していたものを模倣したものになる。
物議を醸す投稿に対し、異なる意見を持つユーザーが「ノート」を追加し、背景情報や検証情報を寄せる仕組みだ。多様な視点をあえて衝突させることで、誤情報を「衆人環視」によって浮き彫りにしようという考え方だ。
Xの状況を見る限り、十分に議論が進んだ投稿に関しては、コミュニティノートがうまく機能しているように見える。
一方で、コミュニティノートが完成し閲覧者の目に触れるまでには時間差が生じ、ノートの内容が“成熟”するまでにはさらに時間がかかる。
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